読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

ジャパン・クライシス

「死屍累々

小林   インフレが酷くなっていく間は「どこまで奈落が続くのだろう」と思うでしょうね。しかし、景気が一反底を打てば、環境は激変するはずです。中小企業の新規開業が相当増えてくる。


橋爪   遊休施設だらけなので、何でもできる。それまで築いた社会インフラはすべて残っているわけですから。そして復興の鍵は、技術力以外にない。在来の技術を深めて、町工場で頑張るというやり方もありますが、長時間労働になってしまい、割に合わない。(略)


小林   それにしても、日本の近現代史で、突出した大事件となるでしょうね。


橋爪   戦争に敗けたのと同じくらいの打撃です。


小林   国民生活に与えるインパクトは相当大きいはずです。


橋爪   戦争に比べてましなのは、人が死なないことです。戦争の時は、空襲も原爆もありましたから、三〇〇万人以上が死にました。(略)


小林   その代わり、多数の自殺者が出るでしょうし、経済的な理由で医療を受けられず、本来なら助かるはずの命がそうならないケースも相当出てくるかもしれません。


橋爪   大震災や津波から何とか避難できても、そのあと、仮設住宅などで高齢者が亡くなっていくケースもありますね。それと似たことが起きるでしょう。そう考えると、自殺者や病死を含めて、五〇万人くらいの犠牲者は覚悟しないといけないと思う。


小林   そうすると戦争をしたのと同じくらいの被害ですね。


橋爪   精神的なストレスだって大変なものでしょう。


小林   だからこそ、そうした事態に陥らないよう、全力を附くなくてはならない。


橋爪   もちろんです。でも万が一、ハイパーインフレが起きても、そのどん底の状態から、何らかのメリットを見つけるべきです。財政再建プランを明確に打ち出す。国債残高はゼロにはならないので、残額はきちんと返済していく。


原資は国民の預貯金です。応分の負担を国民が負って、五〇万人の弱者の命が失われないようにする。負の遺産をすべて克服して、しっかり日本bんを再建する。それは、素晴らしくないですか。


小林   先進国としては、それがあるべき姿です。経済破綻は、日本人には統治能力が欠けているということを証明しているようなものです。先の戦争に敗れたことも、そうでした。ここで経済破綻が起きてしまうと、日本人の統治能力不足を、世界に向けて二度もさらけ出すことになる。


橋爪   先ほど「次の目標がない」と言ったのはそういう意味でした。再び同じ轍をんでしまったら、つぎに頑張る理由はいったい何だろうと若い人が思う可能性がある。


小林   経済破綻が罪深いのは、そういう意識を若者に植え付けてしまうことではないでしょうか。


(略)


橋爪   無政府状態に近づけば、サバイバル能力のある人が、無い人を踏みつけにうような社会になってしまう。

(略)」