読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

フランスはどう少子化を克服したか

「2015年の発表のデータでは、帝王切開以外の出産(経腟出産)の80%が硬膜外麻酔(局部麻酔の一種)で行われました。

自然分娩か、無痛分娩か。その選択は妊婦に任されていますが、麻酔費用が出産支援の一環として全額、国の医療保険(日本の国民健康保険に相当)の負担となっていること等もあり、無痛分娩の垣根が低いのです。」



「そのつらさは例えるなら、お腹を下した時のキューッと絞るような鋭い痛みが10分おきに来ては止み、一晩中続く状態です。」

〇この「お腹を下した時の痛み」という表現、私はこの年になって初めて見ました。
若い頃から、お産の時の「痛み」については、何度も聞いていましたし、実際自分が経験した後も、聞きましたが、この「お腹を下した痛み」というのが、経験者として一番正確だと感じました。

どれほど恐ろしい痛みなのか、と思っても、お腹を下すことは、誰しも経験していて、辛いけれど、過ぎ去ってしまえは不思議に忘れてしまいます。

とはいえ、出産直後は、もう二度と子供は産まない、と思うくらい辛かったのは事実です。

「「あなたね、産んでからの方が大変なのよ。これ以上消耗して、今日の夜から赤ちゃん世話ができるの?」産んでからの方が、大変?!
まさに、冷水を浴びせられたような気分でした。」


「フランスには里帰り出産や「床上げ」のような風習が無く、日本よりも、祖父母の手助けを期待できない文化背景があります。」




「その後1993年、かのヴェイユが再び健康省大臣の職に就き、その翌年には分娩用麻酔が全額、国の医療保険の負担になりました。」



「妊婦の全身麻酔では、呼吸制御能力の喪失が起こる確率が非妊婦の7倍にもなりますから、全身麻酔の割合を減らせることは、周産期妊婦死亡の減少に直結しているといえます。」



「一方の日本では、無痛分娩に対する容認度・認知度は低いままで、「お腹を痛めて産む」ことは重要な通過儀礼と考えられています。」


〇それほど意志的なものではないと感じます。漠然としたそういう価値観はありますが、もし、無痛分娩が安全で問題なく、良いとなったら、一気にそっちに流れると思います。

一番の不安は、麻酔に対する不安だと思います。


「フランスが第二次大戦後最低の合計特殊出生率を記録したのは1993年と1994年(1・66)でした。無痛分娩が全額保険負担となったのが1994年。

1995年から出生率は回復し始め(1・71)、無痛分娩がお産の8割に達した2010年には、戦後ベビーブームに沸いた1974年以来初めて、出生率が2・00を超えています。」



「ここで私が実際、妊娠判明から出産までの8か月間で受けた無料の医療ケアを書き上げてみましょう。2009年と2012年、それぞれの心身出産でほぼ同じ内容でした。


産婦人科検診 10回(妊娠五か月まで民間の産婦人科医診療所、その後出産予定の公立病院)
エコー検査 3回(妊娠12週、22週、32週)
夫と二人で感染症の血液検査(肝炎やエイズなど)それぞれ一回ずつ
歯科検診 1回、その後の治療 2回
産婦人科での出産準備クラス 6回
出産前の麻酔科検診 1回
妊婦糖尿病検診 4回
血糖値コントロール研修 1回
公立病院での無痛分娩での出産
出産前後の入院 4泊5日
産後1か月検診 1回
産後骨盤底筋李リハビリ 10回

出産前後の入院は、産後12日間まで医療保険の全額負担
2016年現在、エコー検査のうち2回は自己負担3割。エコー画像のプリントアウト代は診療費に含まれるが、プリント枚数は通常、患者側は指定できない。

私はこれらに、1ユーロも支払っていないのです。」

〇「産後骨盤底筋リハビリ 10回」が無料というのにびっくりしました。
実際に必要な処置ですし、そこに従事する人々の職業として認められるので、社会として、知恵あるやり方だと思います。

「医療費の支払いシステムは妊婦時代の母親と同じで、医療保険カードがベースです。医療保険金庫に出産届を出し、受理されると、母親と父親の保険カードに子どもがセットで登録され、1枚のカードで親子の医療行為がまとめて受けられます。」


「母子への医療支援は、経済的な面に限りません。出産前後の妊婦と、出生時を満6歳の誕生日までフォローする無料の医療相談所が全国に約5100軒あり、所属医師による定期検診や、ワクチンの無料接種などを実施しています。」



「「とにかくアクセスしやすいこと、を念頭に置いています」そう説明するのは、パリ圏母子保護センターの医師長を務めるエリザベス・オーゼー医師。

「現在乳幼児死亡率の問題は改善しているので、活動の重点は親たちの支援に移っています。(略)そういった親たちをスクリーニングし、その家庭で子供たちが虐待の危険にさらされていないかを監視することも、私たちの重要な役割です。」


「誤解を恐れずに強い表現をすると、妊婦と乳幼児は、ハンディキャップの扱いなのです。」