読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

2018-07-01から1ヶ月間の記事一覧

私の中の日本軍 下 (捕虜・空閑少佐を自決させたもの)

「一体全体「捕虜になったら自決せねばならぬ」という「規定」はだれが制定したのかという問題である。陸軍刑法にはそんな規定はない。従って天皇が裁可した規定ではない。戦後には、この問題でよく引き合いに出されるのが「戦陣訓」だが、「空閑少佐事件」…

私の中の日本軍 下 (捕虜・空閑少佐を自決させたもの)

「同じ殺人でも、情況によって量刑はかわる。正当防衛なら無罪という場合もありえよう。しかしいずれの場合も「殺人」という行為が法にふれるという点では、基本的には差異はない。 しかし戦犯の実行犯においてはそうでなく、ある人間の同一の行為が戦犯にな…

私の中の日本軍 下 (捕虜・空閑少佐を自決させたもの)

〇「空閑少佐」という名前を初めて聞きました。 ここの文章を読み進めてみても、なんとなくわかるようなわからないような… なので、こちらのサイトを参考にしました。 「wikipedia 空閑 昇」 「順法闘争で記者が「とまる」。だがこの方式を逆にすれば「暴走…

私の中の日本軍 下 (陸軍式順法闘争の被害者)

「私がたえず心の中にあった二人の死をまたありありと思い浮かべる結果になったのは、ある一通の匿名の手紙が契機であった。その人は、浅海特派員と向井少尉の無鍚における不幸な「食後の出合い」の傍らにいたのか、あるいは単に、推理と想像に基づいて断定…

私の中の日本軍 下 (陸軍式順法闘争の被害者)

「もっとも今でも行われているであろう「ハン取りの序列」だって、私の目から見れば全く「下らん」「バカバカしい」の一言につきるが、それすら官僚機構の内部では大問題なのだろうから、軍隊だけがバカげた組織だったとはいえまい。」 〇国が滅びるかどうか…

私の中の日本軍 下 (陸軍式順法闘争の被害者)

〇 この後、山本氏が絡んだ、「抗争事件」について、細かく説明されているのですが、イマイチ、よくわかりません。ただ、前回書いた、「働き方改革」で「残業代なしで労働しなければならない弱者が出る」という絡繰りに似た情況だったのか?、と想像します。…

私の中の日本軍 下 (陸軍式順法闘争の被害者)

「ついで私は部隊長の書簡の内容を説明し、S大尉の意見もきき、それから隣室の高級参謀、作戦主任参謀のA中佐の部屋に恐る恐る入るというのが順序であった。 A中佐は体躯堂々、背が高く肩が張り、大きないかつい顔とギョロリとした目をもつ、絵に描いたよう…

私の中の日本軍 下 (陸軍式順法闘争の被害者)

「「諸君!」連載、児島襄氏の「幻の王国・満州帝国の興亡」を読んでいるうちに、思わず、アッと声を立てるほど驚いた。それは満州事変の首謀者のやったことと私のやったことは、そのやり方の基本図式においては、全く同じだったという驚きである。 もちろん…

私の中の日本軍 下 (軍隊での「貸し」と「借り」)

「私は無事にツゲガラオについた。町は完全な廃墟で、住民は四散していたが、幸い自転車屋兼自動車修理屋のEも、その弟の時計修理屋のAも、カパタンという部落に疎開していることがわかった。 この部落は前にも書いたが、一村こぞって鍛冶屋である。車が通じ…

私の中の日本軍 下 (軍隊での「貸し」と「借り」)

「私がこれはほとんど向井少尉の談話そのものだと感じた理由の一つは、戦場の軍人の感情がはっきり出ているからである。 戦場の軍人は必ず「敵は強かった」という。これは現実に敵と向き合っている人間の実感である。 同時にこれは一つの自慢なのであって、…

私の中の日本軍 下 (軍隊での「貸し」と「借り」)

戦傷は戦死より恐ろしいことであり、特に敗戦・壊滅・撤退という状況においては、ある種の戦死は確かに安楽死であり、負傷、特に足の負傷は、最も残酷な拷問死である。 これは誇張ではない。私のみならずほとんどすべての者が、弾があたるのなら頭部貫通銃創…

私の中の日本軍 下 (戦場の内側と外側)

「「戦争とは輸送である」という言葉は事実である。戦場というものが常に「戦闘」であるかの如く思われるのは、その瞬間しか報道されないからであろう。 たとえば火野葦平氏は、「麦と兵隊」の中で「戦争とは歩くことだ」と記されている。 また「百人斬り競…

私の中の日本軍 下 (戦場の内側と外側)

「こういう点における「日本軍の方針」は全く支離滅裂で、分裂症もいいとこだと言いたいぐらいであった。南方一帯の共通語は、非常にブロークンとはいえ英語である。そして日本軍は南方一帯を占領し、派遣軍は現地で自活さす計画である。 現地自活は輸送路を…

私の中の日本軍 下 (戦場の内側と外側)

「なぜ死体までもって逃げたか。おそらくそれは、彼らが純粋なカトリック教徒であったからであろう。文化様式には理由がないから、何とも致し方ないことであるが、彼らにとって「火葬」とは「火刑」に等しいことであったと思われる。(略) 従って、彼女が、…

私の中の日本軍 下 (戦場の内側と外側)

「確かに、戦場は大変である。しかしそれは、今の表現をそのまま続ければ、「死亡5」には無関心でもラッシュアワーは大変だ、という意味で大変なのであって、人は今と同様、「数」に還元された他人の死は、実際は少しも「大変」ではない。 これにもいろいろ…

私の中の日本軍 下 (S軍曹の親指)

「私は一歩下がって片膝をつき、軍刀を抜くと、手首めがけて振り下ろした。指をばらばらに切るより、手首ごと切った方が良いように感じたからである。がっといった手応えで刃は骨にくいこんだが、切断できなかった。 衝撃で材木から手がはずれ、手首に細いす…

私の中の日本軍 下 (S軍曹の親指)

「こういう場合、ナタか鋸の方が的確な道具であろうが、それは何か遺体に失礼だという気もした。墓を掘り起こすことも、手を引きだすことにも、確かに抵抗はあったであろう。しかしそういうこととは別に、親指を切り離すと二人と私との紐帯が切れてしまうよ…

私の中の日本軍 下 (S軍曹の親指)

「しかしトラックに近づくと、希望的観測は一気に消えていった。駕橋(ボデー)の上にもトラックの下にも周囲にも、折り重なって死体が散乱していた。特に駕橋(ボデー)の上の死体は、手足が千切れて散乱し、目も当てられない惨状であった。ハエの大群はす…

私の中の日本軍 下 (S軍曹の親指)

「なれとは恐ろしいものである。彼らが出発して三十分たたぬうちに敵機が来襲したが、それは「日課」で、だれも気にとめなかった。ロッキードの双胴地上攻撃機六機が頭上を通過すると同時に、バリバリという物凄い音がした。しかし機銃掃射は、頭上で音がし…

私の中の日本軍 下 (S軍曹の親指)

「昭和二十年二月、フィリピンにおける情勢はもう極度に悪化していた。というより、絶望的と言った方が良いだろう。日本軍の保持しているのはすでに中部の山岳地帯と東地区三州_カガヤン州、イサベラ州、ヌエバビスカヤ州にすぎなかった。 平地はすでにこの…

私の中の日本軍 下 (S軍曹の親指)

「「百人斬り競争」を徹底的に調べられた鈴木明氏が非常に興味深いことを述懐しておられる。(略) <彼は向井少尉には好感を持っていないことを、はじめから明らかにしていたが、こと「百人斬り」の話になると「そんなこと誰が信じてるもんですか」といい、…

私の中の日本軍 下 (白兵戦に適さない名刀)

「さらに「南京事件」がマスコミに大きく取り上げられたころ、新聞が、雑誌が「何人斬り」とかの体験者なる者を登場させていろいろ証言させたらしい。私はそれを読んでいないが、ある人から「山本さん、ああいうことが本当にありうるのか」と訊かれて少々驚…

私の中の日本軍 下 (白兵戦に適さない名刀)

「前号で成瀬関次氏の「戦ふ日本刀」についての三氏のお手紙を紹介したところ、小平市のH氏から、文芸春秋経由で、その本を一部お送り頂いた。(略) それは「言論統制下の発言をどう読むか」という問題なのである。(略) この本も同じように「日本刀を礼賛…

私の中の日本軍 下 (日本刀神話の実態)

「しかし現実の戦場で刀剣を振るうということは、実は、昔から極めてまれな事でなかったかと思う。というのは、団体戦闘における近接戦の主力兵器は、洋の東西を問わず、昔から実際は槍であって刀でない。 槍は銃槍、銃剣と変化し、また、ある特別の銃槍は、…

私の中の日本軍 下 (日本刀神話の実態)

「まず、戦犯という問題が発生する以前に、二人がこの「百人斬り競争」について個人的に何を語ったかである。この点、向井少尉は時には粗暴ともいえる態度で「ノーコメント」で押し通したらしく、彼が直接に語ったと思われる言葉は、未亡人の次の言葉だけで…

私の中の日本軍 下 (日本刀神話の実態)

「考えてみれば、日本軍とは、全日本人を網羅した日本史上最大の全国的組織であった。これほど厖大かつ強力な組織は、過去にはなく、また将来も再生することはあるまい。 幸いその組織は消えた。従って今やこれを一つの資料としてあらゆる面から自由に探求で…

私の中の日本軍 下 (戦場で盗んだ一枚のハガキ)

「以上二章にわたって大分くわしく「里心」について記したが、「百人斬り競争」という問題で、二少尉がなぜ浅海特派員の誘いに応ずる気になったかという点で、今の人にもっともわかりにくいのが、通信の手段を奪われ、たとえ手段が入手できても、書きたいこ…

私の中の日本軍 下 (戦場で盗んだ一枚のハガキ)

「私は椅子をすすめられ、彼の脇に腰掛けた。そのとき、サイド・テーブルの代わりをしている書類箱の上の、一枚の軍事郵便ハガキが目に留まった。「あ、あれを野戦郵便局に持って行けば家につくわけだ」私の目は吸い寄せられるようにそこへ向かい、釘付けに…

私の中の日本軍 下 (戦場で盗んだ一枚のハガキ)

「当時のフィリピンは_今でもそうらしいが_超富豪と超貧民しかいない国であった。中産階級というものがない。従って日本のように中産階級用の施設は一切ない。そこで、こういう金持用の施設はあくまでも超富豪用のものだから、その贅沢さは、 日本の典型的…

私の中の日本軍 下 (精神的里心と感覚的里心)

「正座して、まず味噌汁をとった。かすかな湯気と共に、味噌と煮干しの匂いが鼻孔に入ってきた。その瞬間涙が出て、鼻孔を流れ、湯気と入り混じった。味噌汁の匂いで涙を流すなどということは、何となく恥ずかしく、照れ臭かった。 私は歯をくいしばって涙を…