読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

2018-11-01から1ヶ月間の記事一覧

一下級将校の見た帝国陸軍(参謀のシナリオと演技の跡)

「だが、前述のように、この名ばかりの一個中隊は、各中隊がそれぞれ、動けない病人と、動かせないで捨てて行った砲とで臨時に編成したものであり、そのため内部はバラバラであった。 中隊長役のS大尉は、名ばかりの指揮班と段列(弾薬糧秣輸送・補給班)を…

一下級将校の見た帝国陸軍(参謀のシナリオと演技の跡)

「考えてみるとそれも六月だった。だが、正確な日付はおぼえていない。 徴兵検査が六月、予備士官学校のベッドでも思索が六月、輸送船が六月でマニラ上陸が六月十五日。また六月が来て、あのひからもう三年がすぎていた。 そして私は「天の岩戸」の底で、死…

一下級将校の見た帝国陸軍(「オンリ・ペッペル・ナット・マネー」)

「虚構の演技のお付き合いが私ですめばまだよい。それはこれから、何千人か否何万人かの現地人に奴隷の役を演じさせようとしている。人海作戦、この恐怖の言葉_わずか十数ドラムのガソリンの代わりに、何千か何万かの人が駄獣の役を勤めようとしている。(…

一下級将校の見た帝国陸軍(「オンリ・ペッペル・ナット・マネー」)

「「ああ、燃料があれば、ガソリンがあれば……」私は心の中でうなった。(略) 問題はただ、そのための”石油”がないというだけなのである。前提の変化を無視し、「気魄演技」で何をごまかしたとて、帝国陸軍の存在自体がすでに虚構にすぎないことを、証明しつ…

一下級将校の見た帝国陸軍(「オンリ・ペッペル・ナット・マネー」)

なぜこういう奇妙なことになったのか。その基本的な理由は、「私の中の日本軍」を記した時より、オイル・ショック後の今日の方が理解しやすいであろう。軍人は二言目には「日清・日露の……」と言った。日露戦争時までは、戦艦、イギリス炭、下瀬火薬、小銃が…

一下級将校の見た帝国陸軍(私物命令・気魄という名の演技)

「将校にももちろんこれがあった。そして辻政信に関する多くのエピソードは、彼が「気魄演技」とそれをもとにした演出の天才だったことを示している。そしてロハスを処刑せよとか、捕虜を全員ぶった斬れとかいった無理難題の殆どすべてが、いつしか習慣化し…

一下級将校の見た帝国陸軍(私物命令・気魄という名の演技)

「事実、参謀が口にする、想像に絶する非常識・非現実的な言葉が、単なる放言なのか指示なのか口達命令なのか判断がつかないといったケースは、少しも珍しくなかった。 ではその方言的”私物命令”の背後にあったものは何であろう。いったい何のためにロハス処…

一下級将校の見た帝国陸軍(私物命令・気魄という名の演技)

「神保中佐は正式の文書が来てもなお、一種の第六感で、「だれかが勝手に作った命令(すなわち私物命令)じゃないか」と思った。そしてそのヒントは前記の引用に傍点を付した部分※、 すなわちバターン戦終了時に、どこからともなく発せられた捕虜殺害の”軍命…

一下級将校の見た帝国陸軍(私物命令・気魄という名の演技)

「天皇の軍隊で、”上官の命令は直ちに天皇の命令”なら、たとえどんな”無茶な”命令でも、命令一下、全軍がすぐさま動き、たとえ”員数作業”でも命令遂行の辻褄だけは合わせるはずである。 従って、われわれが「その命令が本物か否か」を、常に、最後の最後まで…

一下級将校の見た帝国陸軍(一、軍人は員数を尊ぶべし)その5

「おかしいよナァ、実戦なんだから。軍隊だけは、絶対に員数主義があってはならんはずなのだが……」 なぜこうなったのか。ある人は、陸軍ご自慢の委任経理(実費経理でなく、一定金額を委任してやりくりをさす経理方式)がその元凶だと言い、これに対して経理…

一下級将校の見た帝国陸軍(一、軍人は員数を尊ぶべし)その4

「双眼鏡で眺めれば、ラフ島には人影は見えず、島の北端のラフ町はうす汚れた無人の廃墟となり、屋根の落ちた煉瓦建ての教会堂だけが、くっきりと見える。島の西端から、点のような一隻の小舟が左岸へ進んでゆく。行く先は明らかにあの隠れた入り江で、そこ…

一下級将校の見た帝国陸軍(一、軍人は員数を尊ぶべし)その3

「一方われわれはすでに補給ゼロ。一個中隊や二個中隊が左岸に行ったところで、第一、あの広大な左岸地区の、どこをどう歩きまわればよいのか。カガヤン州の対岸だけでルバング島の十倍はある。そこのジャングルから米比軍の”小野田少尉とその部下”を発見す…

一下級将校の見た帝国陸軍(一、軍人は員数を尊ぶべし)その2

「この員数主義の基盤は”組織の自転”であり、その組織の内部に手が付けられず、命令が浸透しないという現実と、後述するもう一つのことに基因していた。これは入営して、虚心、周囲を眺めれば、だれでもすぐに気づいたはずである。 例えば私が入営したのは、…

一下級将校の見た帝国陸軍(一、軍人は員数を尊ぶべし)その1

「移動の時は、身軽な歩兵は砲兵よりはるかに速い。彼らの陣地はバタバタと撤収されて行くのに、砲車はまだジャングルから5号道路まで引き出せない。一方、カガヤン川左岸のゲリラはこちらの動きを察知したらしく、威力偵察らしい”誘い”の攻撃を仕掛けてく…

一下級将校の見た帝国陸軍(みずからを片付けた日本軍)

「指揮官に呼ばれ、ジャングル内の部隊本部に駆け込むと同時に私は言った。「決心変更ですか?」「うむ」指揮班長のS中尉はむっとした顔で私を見た。傍らの部隊副官I中尉は、私の方にちらっと視線を向けてから、だれに言うともなく吐き捨てるように言った。 …

一下級将校の見た帝国陸軍(死の行進について)

「野坂昭如氏が「週刊朝日」50年7月4日号で沖縄の「戦跡めぐり」を批判されている。全く同感であり、無神経な「戦跡めぐり」が戦場にいた人間を憤激させることは珍しくない。 復帰直後のいわゆる沖縄ブームの時、ちょうど同地の大学におられたS教授は、…

一下級将校の見た帝国陸軍(現地を知らぬ帝国陸軍)

「陸軍は、比島派遣軍を現地で自活させるという方針を取りながら、現地の実情には全く盲目であった。そしてその無知はまず基本的な問題「食糧問題」で露呈し、ついでその露呈は、宗教問題・社会問題・男女の問題からあらゆる問題へと及んでいった。 おそらく…

一下級将校の見た帝国陸軍(石の雨と花の雨)

「「週刊朝日」49年2月1日号の、森本哲郎氏と田中前首相令嬢、田中真紀子さんの対談の中に、次の会話がある。 森本哲郎 こんどの五カ国訪問旅行の感想を、ひとことで言うとすれば、どういうことになりますか。 田中真紀子 東南アジアと申しましても、み…

一下級将校の見た帝国陸軍(地獄の輸送船生活)

「それはいずれの時代でも同じかもしれぬ。渦中に居る者は不思議なほど、大局そのものはわからない。従って今なら「戦史」で一目瞭然のことを知らなくても不思議ではない。しかしそれは、前述のような微細な徴候から全貌の一部が判断できなかった、というこ…

一下級将校の見た帝国陸軍(だれも知らぬ対米戦闘法)

「奇妙なこと!忘れもしない、それは昭和十八年八月の中ごろだった。雨の日である。教壇に立った区隊長K大尉は、改まった調子で次のように言った。 「本日より教育が変わる。対米戦闘が主体となる。これを「ア号教育」と言う」と。 (略) 私は内心で思わず…

一下級将校の見た帝国陸軍(すべて欠、欠、欠…。)

「歩けないことと高熱が、教官・助教にも重病の印象を与えたのかもしれぬ。だが実際は就寝五日ほどのことはなく、腰の痛みがとれれば、単純な軽い夏風邪、普通なら連兵休どころか、逆に”気合”を入れられそうな状態であった。だが軍医の診断は命令だから、命…

一下級将校の見た帝国陸軍

〇 山本七平著 「一下級将校の見た帝国陸軍」(昭和51年12月朝日新聞社刊)を文春文庫で読んでいます。 感想は〇……で、抜き書きは「 」でメモします。 文字使いは、原本通りではありません。意味が違わなければ、PCの変換に任せています。 「”大に事(つ…

ジャパン・クライシス

「あとがき 日本の財政が悪化している、ということは誰でも知っています。このまま財政再建ができず、「財政破綻」のような事態になると、国民生活はどうなるのでしょうか。本書では、かなり踏み込んだ予想を大胆に議論しました。正直に言って、現在の経済学…

ジャパン・クライシス

「自己統治への道 小林 これからの日本にとっても、自治の回復はきわめて重要な課題です。日本の民主主義はこれまで「上からの民主主義」でした。政府と国民の関係を考えても、政府と言う「お上」の意向が優先されてきた。 江戸時代以降の日本人は、自分たち…

ジャパン・クライシス

「「逆植民地」計画 橋爪 財政再建に役立つ政策として、ほかに何がありますか。 小林 二つあります。一つは移民についてです。若い移民が入ってくれば、労働力として日本の社会に貢献し、また、所得税や消費税も支払ってくれるので税収が増え、財政状況の改…

ジャパン・クライシス

「「選択と集中」という国土設計 橋爪 従来の発想で従来の政策を続けると、財政が破綻して、日本が持たない。この観点から政策を点検すると、どんな課題が見えて来ますか。 小林 いくつかの分野に分けて考えてみましょう。 まず、地域開発の問題を考えてみた…

ジャパン・クライシス

「財政再建の条件とは? 橋爪 ここまでの議論をまとめてみましょう。 われわれはタイタニック号に乗っているようなもので、このままだと氷山に衝突して沈没してしまう。でも、うまく舵を切ればまだ間に合う。そう簡単ではありません。でも、やるしかない。 …

ジャパン・クライシス

「財政版「中央銀行」 橋爪 さて、消費税率三五%の、本筋に戻りましょう。 本書の提案を進めるには、消費税率三五%を、最低でも五〇年間は維持しなくてはなりません。それには政府が政権交代にもかかわらずに一貫した姿勢をもち、世代を超えて、国民の共通…

ジャパン・クライシス

「資産と負担 橋爪 「一律給付」が原則の、日本の医療保険や年金制度は不合理だというご指摘がありました。では、どうすればいいのか、教えてください。 小林 高齢者の場合、大半が、仕事を辞めていますから、所得額でその人の豊かさを測るのは合理的ではあ…

ジャパン・クライシス(3 まだ間に合う!)

〇 と言っても、この本が出されたのは、2014年です。今はまた事情が違っていると思います。 「年金改革の基本軸 橋爪 さて、とは言っても、三五%の消費税は重い。小林先生は、歳出を徹底的に見直して、カットするいっぽう、消費税も少しだけ軽めに増税…