読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

一下級将校の見た帝国陸軍(「オンリ・ペッペル・ナット・マネー」)

「虚構の演技のお付き合いが私ですめばまだよい。それはこれから、何千人か否何万人かの現地人に奴隷の役を演じさせようとしている。人海作戦、この恐怖の言葉_わずか十数ドラムのガソリンの代わりに、何千か何万かの人が駄獣の役を勤めようとしている。(略)



親しくなったところで、私はきいた。「あなた方は全員、ジャパン・ソゴロ・パターイと思っているのか」と。彼はちょっと黙り、手をあげて、いま難所の運転だといった様子をした。明らかに慎重に返事を考えているのだった。



やがて彼はポケットから十ペソの軍票を出し、私の方を向き、「こまったことだ」と言ったジェスチュアと共に言った。「キャプテーン・オンリ・ペッペル・ナット・マネー」。
その通りであった。軍票を濫発して物資を収奪し、自らは何も生産しなければ、それは紙屑になってあたりまえである。



彼はつづけ、「これをカネにもどしてくれれば、だれも絶対にそんなことは言わなくなる。だから、日本はそれだけすればよいのだ」と。日本の破滅はすでに全比島に流通している。それもまた気魄も演技も通用しないことであった。」



「「少尉殿う、憲兵ば見つかると、ウルサカ。バッテン…」そこで彼は少し気をとりなおして軍隊語にもどり、私を衛兵所に招じ入れた。土嚢をつみ、銃眼をつくり、着剣していながら、彼らは不思議なほど住民を信じ切っており、警戒しているのはむしろ、うるさくてやかましい将校や憲兵の方であった。



そしてそれが後にどんな悲劇を生むか、彼らは夢想だにしていなかった。「比島分哨全滅史」はない。一人も残ら名から記録はない。ただ、わずかに知りうるのは、比島側のゲリラの戦記だけである。



凄惨きわまるその記録。もしこのバスの全員がゲリラで、そのふところに二発ずつの手榴弾をもち、何かの合図で土嚢の中に一斉投弾したらどうなるのか?瞬時にして全滅するにきまっている。「ジャパン・シゴロ・パターイ」。情勢の変化で、ある日一斉にそれが表へ出る。



日本軍の虚構の権威に対応して、彼らもまた虚構の服従をしているにすぎない。それは、「オンリ・ペッペル」を「マネーだ」と言うから、「マネーです」と応じているに等しい態度である。彼らは、子供ではないから「裸だ」と口にしないだけである。



検問はすぐ終わった。「こっちからはウチの警備地区ですケン……」と衛兵司令は言った。民間バスに乗っているところを見つかっても、大したことにはなるまい、の意味であろう。バスは、山麓サンタフェをめがけて、急坂を下りはじめていた。」


〇 「徴用工問題」で訴えられていた日本政府についての記事が今日の夕刊に乗っていました。徴用工問題ということがあるということすら知りませんでした。簡単にいうとどういうことなのか。「yahoo知恵袋 徴用工問題に関して質問します。」
を参考にしました。

ここで、回答者が言っているように、今の安倍政権が戦前の日本を肯定しているというところに、大きな問題があると感じました。


そして、今問題になっている外国人労働者受け入れ拡大に関する「入管難民法改正法案」についても、とても心配しています。