読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

2019-11-01から1ヶ月間の記事一覧

武士道

「第八章 名誉 名誉の感覚は人格の尊厳ならびに価値の明白なる自覚を含む。したがってかの生まれながらにして自己の身分に伴う義務と特権とを重んずるを知り、かつその教育を受けたる武士を、特色づけずしては措かなかった。(略) これら三つの語はそれぞれ…

武士道

「第七章 誠 信実と誠実となくしては、礼儀は茶番であり芝居である。伊達政宗曰く、「礼に過ぐれば諂いとなる」と。「心だに誠の道にかないなば、祈らずとても神や守らん」と誡めし昔の歌人は、ポロニウスを凌駕する。孔子は「中庸」において誠を崇び、これ…

武士道

「第六章 礼 作法の慇懃鄭重は日本人の著しき特性として、外人観光者の注意を惹くところである。もし単に良き趣味を害うことを怖れてなされるに過ぎざる時は、礼儀は貧弱なる徳である。真の礼はこれに反し、他人の感情に対する同情的思いやりの外に現れたる…

武士道

「第五章 仁・惻隠の心 愛、寛容、愛情、同情、憐憫は古来最高の徳として、すなわち人の霊魂の属性中最も高きものとして認められた。それは二様の意味において王者の徳と考えられた。すなわち高貴なる精神に伴う多くの属性中王位を占むるものとして王者的で…

武士道

「第四章 勇・敢為堅忍の精神 勇気は、義の為に行われるのでなければ、徳の中に数えられるにほとんど値しない。孔子は「論語」において、その常用の論法に従い消極的に勇の定義を下して、「義を見てなさざるは勇なきなり」と説いた。この格言を積極的に言い…

武士道

「第三章 義 義は武士の掟中最も厳格なる教訓である。武士にとりて卑劣なる行動、曲りたる振る舞いほど忌むべきものはない。義の観念は誤謬であるかも知れない―狭隘であるかも知れない。ある著名の武士[林子平]はこれを定義して決断力となした、曰く、「義…

武士道

「第二章 武士道の淵源 まず仏教から始めよう。運命に任すという平静なる感覚、不可避に対する静かなる服従、災禍に直面してのストイック的なる沈着、生を賤しみ死を親しむ心、仏教は武士道に対してこれらを寄与した。 ある剣道の達人[柳生但馬の守]がその…

武士道

新渡戸稲造著 「武士道」を読みました。 矢内原忠雄訳の岩波文庫です。 サブタイトルとして、日本の魂 ―日本思想の解明― とあります。 「過去を敬うことならびに 武士の徳行を慕うことを 私に教えたる 我が愛する叔父 太田時敏に この小著を ささぐ」 となっ…

朽助のいる谷間

〇 井伏鱒二著 「朽助のいる谷間」を読みました。 井伏鱒二は、今回初めて読みました。 名前はもちろん知っていたのですが、有名な「山椒魚」も読んだことがありませんでした。 井伏鱒二の名前を知ったのは、太宰治に関連する文章を読んで、だったと思います…

いまだ人間を幸福にしない日本というシステム

「真の愛国主義が試されるとき 本書の結びにあたって、私はふたたび歴史に立ち戻ってみようと思う。そうすることで見えて来るものがあるはずだ。日本の政治に深い関心を寄せるひとりで、偉大な歴史家であるE・H・ノーマンは、「日本の封建後期のすさまじい抑…

いまだ人間を幸福にしない日本というシステム

「有害なるものぐさの克服 日本の市民たちが、社会に蔓延するものぐさという弊害を克服しなければならないことは明らかだと思う。これを読んだ読者はすぐに、私がこの第三部の執筆をはじめたときに感じたと同じような絶望感にかられるかもしれない。 結局の…

いまだ人間を幸福にしない日本というシステム

「第三章 日本民主主義の可能性 (略) 日本の民主主義も後退の一途をたどっていると考える人もなかにはいる。だが日本の民主主義をアメリカやヨーロッパと比較するにつけ、そうではないと私は強く思うようになった。大西洋の両岸では、民主主義を支えて来た…

いまだ人間を幸福にしない日本というシステム

「自動操縦状態に戻る日本 いまこの困難な時期に、日本はまたしても自動操縦状態へと舞い戻ろうとしている。それは飛行を続ける空域にどんな大きな変化が起きようと、まったく心配しない飛行機のようなものだ。財務省があくまで消費税増税にこだわり続けたの…

いまだ人間を幸福にしない日本というシステム

「アメリカの庇護を取り除く アメリカが日本を保護するという、かつての偏った関係が日本にメリットをもたらすという時代は終わった。すべての読者はこのことをしっかりと心に留めておいてほしい。いまなおアメリカが日本を保護しているとみなすことはばかげ…

いまだ人間を幸福にしない日本というシステム

「第二章 不確かな日本の新時代 本書ではたびたび二〇一一年三月一一日の大震災に言及し、これが日本にとって未知の状況をもたらす歴史の節目だと述べて来た。そしてそのような状況に直面して、日本の現職の官僚も、そしてもっと幅広い政治エリート全般も、…

少し感想

〇 「なぜ議論をしないのか」「なぜ政治に拘るのは良くないことだと考えるのか」「なぜ公的領域(市民たちが互いに意見を言い合う場)がないのか」この類の問いを聞くたびに、私は徳川政権の「弾圧」のせいだけではない、それ以前の私たち日本人の気質的なも…

いまだ人間を幸福にしない日本というシステム

「「調和」から抜け出せない日本人 大勢の人々が体制を変えたがっているのに、それがほとんどなんの変化もなく続いているのはなぜかという疑問に対する答えはいくつかある。その中でも重要な意味を持つのは、政党が国民の不満を政策に反映させるという役目を…

いまだ人間を幸福にしない日本というシステム

「しかし一九八〇年代半ばまでは、彼らが国の運営にいかに無能であるか、誰もが気づくほどにはっきりしていたわけではなかった。一九五〇年代以降の日本は冷戦を背景に、アメリカの手厚い保護を受けていた。 しかし舵取りが必要な局面を迎えたいま、日本を動…