読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

ジャパン・クライシス

「人命が第一

橋爪   このような緊急時には、政策の優先順位をきちんと示すことが大事です。
まず第一に、人命尊重。なにしろ、精神的なストレスが相当なものになる。今でも自殺者が年間、三万人ほどもいるわけですが、それが一〇万人になってもおかしくない。


その他、栄養失調に陥るとか、医者に掛かりたくても医療費が払えず命を落すとかいった、平時には考えられないようなトラブルが続出する。それを最小限にとどめることが、最優先です。

第二に、電気やガス、水道、公共交通機関といった、ライフラインを確保しなければなりません。そのための予算は、たとえ財政が破綻していても、きちんと計上しなければならない。食糧の確保も必須です。


小林   通貨価値が一〇分の一になると、値段が一〇倍に跳ね上がりますから、食糧危機に陥る可能性がある。何しろ、いま一〇〇〇円の食べ物が一万円になってしまいますから。


橋爪   もっとも大切なのが食糧の確保です。食糧以外なら、なんとか国内で生産できますが、食糧は絶対的に不足します。


小林   通貨価値が一〇分の一になってしまうと、石油や石炭などのエネルギー、そして食糧を輸入して手に入れるのは非常に難しくなります。


橋爪   政府がバウチャー(食糧切符)を発行するといい。お金を配ってしまうと、そのお金で酒を飲んだりギャンブルしたりする不届き者が出てくる。


小林   バウチャーを配るには、それなりに財源が必要ですね。


だから消費税、三五%dなんです。


小林   とすると、消費税率三五%の税収で、基本的なライフラインを何とか整備し、貧困者の食糧はバウチャー制度を通じて何とかまかなうということですね。


そして、中流以上の人は、それまで一〇〇〇円で済んでいた食費が一万円になったと思って我慢してくれということになる。


橋爪   自力で生きていける人には、何とかしてもらうしかありません。景気が回復しさえすれば、現役世代は働けるわけで、少しの辛抱です。


(略)

橋爪   あとは医療ですね。(略)

小林   インフレによる物価上昇にあわせて保険料を引き上げていけば、破綻することはありません。しかし医療にも、一般会計から相当お金が出ていますので、ハイパーインフレになってからも、政府がそれを負担できるかが問題です。



橋爪   本人負担を増やせば、政府の負担は減ります。


小林   この段階で本人負担を増やすのは、かなり厳しいでしょう。そうなると、どうしても財政規模を拡大せざるを得なくなる。しかし医療は命に関わることですから、躊躇してはいられません。そこで、先ほども話題になった、選択的福祉の原則に立って、高齢富裕層には三〇~五〇%の窓口負担をしてもらい、現役世代にしても、資産・所得に応じて負担してもらう。そうした改革が必要です。


橋爪   賛成です。