「そうして、たどりついた帝都で見たもの。
腐りおちた橋、錆の浮いた城門、居眠りする衛兵。
享楽と怠惰のケタケタ笑い。
信じられない思いがした。ここはどこ。
誰のために、みんなは死んでいくのだろう。」
これに似た描写が以前にもありました。
「グランゼリアで見た無数の屍。それらの亡骸の上で ― もうすぐレナートも
仲間入り ― 帝都の人間は笑って踊ってる。あまりにちぐはぐだった。」
「多分ミレディアが気持ち悪くなったのも、亡骸の中を歩いているような
オレンディアたちと、その上に成り立つ享楽の都の異様さに、
精神が悲鳴をあげたのだと思う。
何も考えず明日を浪費できる帝都は、底なし沼に似ていた。
そこに浮く一片の木切れの上で、誰もが踊り狂ってるみたいに、異様で、
正気に思えなかった。わめいてそこらじゅうの人間を斬りつけて
やりたいように思ったのを覚えている。」
「オレンディアは巨大な墓穴を見た。黒鷲部隊が日没までに仕事を終えようと、
急ぎ足で無縁遺体を投げ入れていく。こんなに掘っても、すぐいっぱいに
あふれる。放り込まれた死体は、煮崩れたようにばらけて、骨や腸を
飛び出させたまま、しんとする。
ここもいつかは緑の公園になるのかも。オレンディアは皮肉っぽく
微笑んだ。綺麗な公園は、たいてい古戦場の上。昔々の死体の上を、
みんな知らずに歩き回っている。」
繰り返されるこの描写をいちいち気にする私がおかしいのか…
なぜか、やたら今の私たちの国のケタケタ笑いをイメージしてしまいます。