和子「あたしにはわからない。どうしてそこまでしなきゃならなかったの?
教えてよ。あたしたちはそれほどひどいことをした?
お願いだから教えてよ。あたしたちは死ぬほどの罰を受ける必要があったの?」
吉武浩一は何度も「不公平だ」と言いました。
実際、本当に不公平だと思います。せっかく順調に頑張っていたのに、
事故で進路を狂わされてしまった。
でも、不公平という意味では、生まれながらにみんな不公平です。
この吉武浩一は、母親譲りの美貌で、「鼻が利いて」仕事が出来る人だった。
でも、生まれながらに醜く能力も低く、どう頑張っても芽が出そうも無い
状況で生きなければならない人はたくさん居ます。
持ってるもの、置かれている状況はまるで違っているのに、
問われる責任は同じ、というのがすごく不公平だと思います。
「守はようやく、じいちゃんの言葉の意味がわかったと思っていた。
お前の親父さんは弱かった。弱かった親父さんの悲しかったところを
わかるようになるときが、きっとやってくる。」
たいていの人は弱い。すぐに基準がグラグラになって、
ちょっと間違えると犯罪者になる。犯罪者にならずに居られるのは、
幸運だからだと感じます。
それがわかって、守も許せるようになった、ということなんでしょうか。
それでも、父親の死体は見つけたい。そこで再び催眠術が登場します。
吉武浩一は自首。で、一件落着。気分もすっきりのラストでした。