読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

日本中世の民衆像

「自由民」としての平民

○公事とは共同体の行事に淵源をもち、その成員が負担していたものの
 転化形態

 取られるだけではない。単なる封建地代ではない。

○平民を、隷属民としてだけ理解するのは正しくない。
 「自由民」の特質も持っている。

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(感想)
平民には自由民の側面もあったと考えたい気持ちはとてもよくわかるけれど、
その根拠がどこにあるのかが、わからない。

一般庶民が重い苦しいといいながらも背負い続けた意味、とか
それなりに自己納得して負担を背負ってきた意味というけれど、

現在の一般庶民を考えても、そうせざるを得ない中でただ日々を生きるしか
ないのが、非力な人間なわけで、主体的に背負い続けた、
自己納得していた、となぜ言えるのかと思うのですが。

もちろん、そう考える庶民も間違いなく居たとは思いますが、
なぜ、この網野さんが、そのことに拘るのか、よくわかりません。

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○平民の中にも下人・所従を所有している人があり、
 平民にも階層があった

○地頭・荘官はいろいろ理由をつけて、平民を下人・所従にしようとする。
 平民は抵抗する。

○平民とその共同体の抵抗は非常に強いので、在地領主もたやすく人身の
 所有を貫徹できない。

○下人・所従もさかんに逃亡する。

○人身所有に対する抵抗の表れ方は、ギリシャ、ローマの奴隷所有の
 あり方と比べ不透明。

○「そのような呪術的、共同体的な性格を「地主」「領主」の
 土地私有はもっている。実際、江戸時代に入っても、
 元禄ごろまでは、質地は質入主の手に返るのが当然で
 なかなか流れなかったと思われます。」

○「たとえば会津世直し一揆は、領主からの借金や年貢未進による
 貸借の破棄、永代売地の元金による返還、質地の無償返還を
 要求しており、まさしくこれは「徳政」を求めたものと
 いわなくてはなりません。」

前近代的な共同体・土地所有を、おくれた克服されるべきものとだけ
 考える立場からは、こうした問題それ自体の意味を問う視点は出てこない
 のでありますが、むしろ、そうした抵抗、摩擦のなかに、
 人間として切り落としてはならぬ大切な問題があることを考えつつ、
 いわゆる在地領主のあり方をあらためて追究してみたい、
 人間と土地の私有、地代の意味をもう一度考えてみたいというのが、
 私自身にとってのこれからの課題であります。」

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(感想)

難しくてよくわからないのですが、でも、この網野さんの本には、
歴史学」という視点からだけではない見方が感じられます。
歴史を研究するというより、人間を見ようとしているような
気がします。

民俗学なのか、社会学なのかわかりませんが、そこに惹かれるものを
感じます。