読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

日本はなぜ敗れるのか _敗因21か条

『生物学    生物学を知らぬ人間程みじめなものはない。軍閥は生物学を知らない為、国民に無理を強い東洋の諸民族から締め出しを食ってしまったのだ。人間は生物である以上、どうしてもその制約を受け、人間だけが独立して特別な事をすることは出来ないのだ。』

〇「精神の生活の中で、ハンナ・アーレントが繰り返し、「真理は強制する」と
言いました。

せめて、その「強制」を受け入れる真っ当さだけでも、あったらと今も思います。


『日本人は命を粗末にする(一部)   日本は余り人命を粗末にするので、終いには上の命令を聞いたら命はないと兵隊が気付いてしまった。生物本能を無視した狩り方は永続するものでない。特攻隊員の中には早く乗機が空襲で破壊されればよいと、密かに願う者も多かった。』


「最初に記したように、私が、本書を読んで「三十年ぶりに本ものの記録にめぐりあった」と感じた一番大きな点は、氏が人間を「生物」と捉えている点である。(略)


氏は、ある状態に陥った人間は、その考え方も生き方も行動の仕方も全く違ってしまう事、そしてそれは人間が生物である限り当然なことであり、従って「人道的」といえることがあるなら、それは、人間をそういう状態に陥れないことであっても、そういう状態に陥った人間を非難罵倒することではない、ということを自明とされていたからである。」


「氏は、戦乱飢餓に苦しみ続けた中国人が、なぜ人間性悪説を考えたかを、次のように記している。


人間性悪説    平地で生活していた頃は、人間性悪説等を聞いてもアマノジャク式の説と思っていた。ところが山の生活で各人が生きる為には性格も一変して他人の事等一切かまわず、戦友も殺しその肉まで食べると言う様なところまで見せつけられた。

そして殺人、強盗等あらゆる非人間的な行為を平気でやる様になり良心の呵責さえないようになった。こんな現実を見るにつけ聞くにつけ、人間必ずしも性善にあらずという感を深めた。戦争も勝ち戦や、短期戦なら訓練された精兵が戦うので人間の弱点を余り暴露せずに済んだが、負け戦となり困難な生活が続けばどうしても人間本来の性格を出すようになるものか。

支那の如く戦乱飢饉等に常に悩まされている国こそ性悪説が生まれたのだということが理解できる。』


(略)

人間とは生物である。そしてあらゆる生物は自己の生存のために、それぞれが置かれた環境において、その生存をかけて力いっぱい活動して生きている。人間とてその例外であり得ない。平和は、自分たち人間だけは例外であるかのような錯覚を抱かす。しかしそれは錯覚にすぎない。

もちろんその錯覚を支えるため、あらゆる虚構の”理論”が組み立てられ、人々はその空中楼閣を事実だと信じている。しかしその虚構は「飢餓」という、人間が生物にすぎないことを意識させる一撃で一瞬のうちに消えてしまう。」