読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

中空構造日本の深層

「人間の管理する社会は、人間の魂の自由を許さない、と先に述べた。ここで魂という言葉に奇異な感じをもたれた人も多いであろう。(略)

筆者がここにあえて「魂」という言葉を用いたのは、実のところ、最近読んだ、物理学者のハイゼンベルクとパウリの対話が念頭にあったためである。」


「これに対してハイゼンベルクは、「なぜならば”魂”という言葉はまさにここで、存在の中心を示している中心的秩序であるからで、それは外面に顕現するさいの形態としては非常に多種多様で、そして見通し難いものであるかもしれないからさ」と答えている。


つまり、魂という用語は現在の自然科学の先端をゆく人々にとっても、重要な用語として用いられているのである。彼らは神話の知と無縁ではない。」



「(略)ここに中心として据えるものは、ある種の曖昧さをもつものでなければならない。(略)

しかし、その統合は明確な中心をもった論理的整合性によって成立しているものではない。」


「このことは、われわれの論述の流れと関連して言うならば、神話の知を語るときに、明確に規定された概念によるよりは、多義性を許すメタファーによって語るのが適切であるということになる。」


「たとえば、魂を風というメタファーによって語ろうとするとき、風ということによってのみ伝え得るもの、対象としての風のみでなく、それを肌に感じ、それによって動く草の波立ちを見て自分の心の中に立ち動くもの、それらすべてを含むものとして、風はメタファーであり得る。


それは日常経験としての風を超え、言語化し難い心の動きをそこにもたらすのである。」


人間がこの世に真に「生きる」ためには、個々人にふさわしいメタファーの発見と、それの解読を必要とする。ところが実情は、既に述べたような現代の管理的な社会機構によって、メタファーは全体の構成から段々と排除されつつある。それが現在生き残っているのは、むしろ文化の周辺部に存在する、マンガ、SF、コマーシャルなどの世界ではなかろうか。


〇真に生きる為には、メタファーの発見と解読が必要だ、という意味がイマイチよくわかりません。

マンガ、SF、コマーシャルにそれがある、という意味もよくわかりません。

メタファーを風の例えで説明してくれたように、具体例で説明してもらわないと、わからない頭脳なので、困ります。


理論物理学者の言をあまり引用できなかったが、彼らも結局はメタファーによる世界の把握を意図しつつあると思われる。

ケストラーによる「偶然の本質」は、そのような物理学者の姿を垣間見せてくれるが、同書に引用されているジェームス・ジーンズの言葉の中に、「この宇宙はかつてはひとつの偉大な機械として考えられていたが、今日ではむしろひとつの偉大な思想として考えられ始めている」というのがある。


このように考えると、今まで、科学の知と神話の知と区別して述べてきたことも「統合」され、ユングが言うように物質と心とを一元化した「ひとつの世界」の世界観が成立するかと考えられる。」