読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

中空構造日本の深層

「人間の管理する社会は、神が統治する国よりも、人間の魂の自由を許さないのである。中世の暗黒時代と言われる時期に生きた人々と、現代人とはたしてどちらが多くの自由さを持っているか、もう一度、真剣に検討してもいいのではなかろうか。

神はその領地の中に「暗黒」という、魂の自由を許す場所を含めていたが、コンピューターによる管理は、全てを白日のもとに曝してしまうのである。


実際、十七世紀において近代科学の基礎を築いた「科学者」たちは、われわれが想像するよりはるかに暗黒な世界との濃密な関係を維持していたのである。」


「今まで用いてきた表現を用いるなら、現代の人々は、十七世紀の「科学者」の有していた神話の知をまったく切り捨てて、「科学者」としての像をつくり上げているのである。

とすると、現代の科学者は神話の知とまったく無縁であるのだろうか。あるいは、神話の知を否定することが現代の科学者の条件であろうか。」


〇ここを読みながら思い出したのは、あの「精神の生活」でハンナ・アーレントが言っていた、「伝説」に戻ろうと言っていたことです。

伝説と神話は、少し違うのかもしれませんが、共通するのは、私たち人間の祖先は、様々な知恵を働かせて今の私たちの文明に繋がる基礎をつくり上げた。

その、一番最初の知恵を見なおそう、という考え方だと思います。

アーレントの「精神の生活」からの引用を、もう一度載せたいと思います。

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「人間社会が疑う余地ないほど膨大に多様なのはなぜかについての「創世の物語」[「初めに」]ほど暗黒と神秘に包まれて見えるものはないのである。」



「我々が日常世界で費やすのは現実のほんのわずかであるが、そこでは、我々が確信できるのは、地球上の空間距離が縮まるのと同じように、我々の背後の時間が決定的に縮まることだけだ。

ゲーテの「三千年」(”三千年について/釈明することのできない人は/
経験なきまま闇の中に留まり/毎日毎日をいきるがよい”)を思い起こしてみると、我々がたかだか数十年前、古代と呼んでいたものは、我々の祖先にとってよりも今日の我々にとってずっと身近である。」


「そして我々がこういう状況の中でせいぜいできる事は、これまでの世代が神秘的な「初めに」[創世の物語]をなんとか把握するために伝統的に理解の手がかりとしてきた伝説にたちもどることである。


私は創設の伝説のことを指している。それは明らかに、あやゆる統治支配の形式やそれを動かす一定の原理よりもその先にある時間にかかわることである。


しかし、それが取り扱う時間は、人間の時間であり、それらがさかのぼった端緒は、神の創造ではなくて、人間が作り上げた一連の出来事なのである。そのことについては、昔の物語を想像力を働かせて解釈することによって記憶に達することができる。



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ここで、河合氏も同じようなことを言っているのだと思いました。