読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

タイガーと呼ばれた子_愛に餓えたある少女の物語

「チャドとは友好的に別れたので、今でも連絡はとりあっていた。彼は同僚の弁護士リサと結婚し、あと一か月ほどで初めての赤ちゃんが生まれることになっていた。」



「「じゃあシーラはどこにいるの?」
「わからない。父親はこの二年ほどブロードヴェーで暮らしていて、そっちで逮捕されて警察に記録を残されている。記録の照会のためにこっちへ書類を送って来ただけだよ。彼にはまったく会っていない。」
「でも、シーラはどこにいるの?」私は頭を垂れてつぶやいた。」



「結局わたしはこの手紙を刑務所気付けで父親に宛てて送り、シーラに転送してくれるように頼んだ。(略)


それから 二年後、わたしの机の上に小さな封筒が置かれた。自宅ではなく当時私が教えていた大学の住所が書かれていた。すぐにシーラのぞんざいな書きなぐったような筆跡だと気づいた私は、急いで封筒を破って開けた。


なかにはしわだらけの罫線入りのノートの切れ端が一枚入っているだけだった。ブルーのフェルトペンで書かれた文字には、まるで雨が降って来たかのように何か所も水で濡れた跡があった。それともあれは涙だったのだろうか。


トリイへ、いっぱいの"愛"をこめて

他のみんながやってきて
わたしを笑わせようとした
みんなはわたしとゲームをした
おもしろ半分のゲームや、本気でやるゲームを
それはらみんなはいってしまった
ゲームの残骸の中にわたしを残して
何がおもしろ半分で、何が本気なのかもわからずに
ただわたしひとりを
わたしのものではない笑い声のこだまする中に残して
そのときあなたがやってきた
おかしな人で
とても普通の人間とは思えなかった
そしてあなたはわたしを泣かせた
わたしが泣いてもあなたは大して気にかけなかった
もうゲームは終わったのだといっただけ
もして待っていてくれた
わたしの涙がすべて歓びに変わるまで


他には何もなかった。手紙もメモも何も入っていなかった。宿題だけを送って来たときのように、シーラは説明する必要などないと感じているようだった。今度は私が泣く番だった。わたしは泣いた。」


〇ここまでが、第一部となっていて、「シーラという子」のあらすじを振り返っているような内容になっています。

シーラという子の最後、エピローグにも、この「詩」が載っていました。