読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

安倍官邸とテレビ

砂川浩慶著 「安倍官邸とテレビ」(2016年発行)を読みました。

具体的な事実を中心にメモしておきたいと思います。

「こうした経緯をみて、あらためて思うのは、言論・表現の自由は権力者のためではなく、少数者・社会的弱者のためにあるということだ。安倍首相は「私にも言論・表現の自由がある」とたびたび発言しているが、「言論・表現の自由」は権力者ではなく少数者・社会的弱者のためのものなのである。さらに言えば、社会的強者の発言に対して、弱いものが自由に意見を述べることが保障されることで「表現の自由」は確保されるのだ。権力者が「言論・表現の自由」を自ら持つことを強弁すること自体、「言論・表現の自由」の重要性を理解していない証である。(略)」



「例えば、表現の自由を定めた日本国憲法第二一条(前掲)の2項(検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない」(自民党案では「3 検閲は、してはならない。通信の秘密は、侵してはならない」)の前に、

自民党案では次の条文が2項として入っている。

2 前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない。


1項で表現の自由を保障しつつ、「公益及び公の秩序を害することを目的」とする活動・結社を認めない文言が追加されているのだ。この文言が問題なのは、誰が「公益及び公の秩序を害する」と判断するのか、である。


昨今、安倍政権では「国益」という言葉がよく使われる。「国益」は「国家益」と「国民益」に分けられる。終戦時、軍部を中心に「国体護持」に大日本帝国がこだわったように、「国家益」が全面に出れば、「国民益」がないがしろにされることは歴史が教えてくれている。


この「公益及び公の秩序」は「表現の自由」の条文だけでなく、自民党案の中で盛んに使われている。(略)



戦後の日本は、GHQによって民主化が進められた。(略)」



「もう一つの特徴は、その「全国紙」と、東京・大阪のテレビキー局・準キー局が系列化していることである。世界的には、このようなクロスオーナーシップ(特定資本が複数のメディアを傘下に置くこと)は問題視されることが多い。



読売新聞は、元警察官僚であった正力松太郎氏が一九二四(大正一三)年に社長となり、発展の基礎を築いた。正力氏は、一九三四(昭和九)年には大日本東京野球倶楽部読売巨人軍の前身)を創設し、戦後、一九五二(昭和二七)年に民法初のテレビ局である日本テレビ放送網を設立。一九五五(昭和三〇)年には、自民党所属の衆議院議員となった。
これによって、読売新聞・日本テレビ自民党の密接な関係が構築された(正力氏は初代原子力委員会委員長でもあった)。(略)」



「【全国紙と在京・在阪テレビ局関係図】(一九七五年~現在)
毎日新聞―TBSテレビー毎日放送


自民党のメディア介入は一九六〇年代に始まる

政権与党として新聞の全国紙とテレビ局を結び付け、免許制度である放送に関して監督権限を持ち、公共放送であるNHKに対しては予算・人事に関して国会での承認権を握る。
こうして、マスメディアに対して一定の影響力を持ったのが自民党であった。(略)」