読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

サピエンス全史 下

「<拡大するパイ> 資本主義の第一の原則は、経済成長は至高の善である、あるいは、少なくとも至高の善に代わるものであるということだ。なぜなら、正義や自由やさらには幸福まで、すべてが経済成長に左右されるからだ。

資本主義に尋ねてみるといい。ジンバブエアフガニスタンのような所に、どうすれば正義と政治的な自由をもたらせるのか、と。


おそらく、安定した民主主義の制度には経済的な豊かさと中産階級の繁栄が重要であり、そのためにはアフガニスタンの部族民に、自由企業性と倹約と自立がいかに重要かを叩き込む必要があるということを、こんこんと説かれるだろう。」



「この新しい宗教は、近代科学の発展にも決定的な影響を与えてきた。(略)
逆に、科学を考慮に入れずに資本主義の歴史を理解することもできない。経済成長は永遠に続くという資本主義の信念は、この宇宙に関して私たちが持つほぼすべての知識と矛盾する。獲物となるヒツジの供給が無限に増え続けると信じているオオカミの群れがあったとしたら、愚かとしか言いようがない。」



「ここ数年、各国の政府と中央銀行は狂ったように紙幣を濫発してきた。現在の経済危機が経済成長を止めてしまうのではないかと、誰もが戦線恐々としている。

だから政府と中央銀行は何兆ものドル、ユーロ、円を何もないところから生み出し、薄っぺらな信用を金融システムに注ぎ込みながら、バブルがはじける前に、科学者や技術者やエンジニアが何かとんでもなく大きな成果を生み出してのけることを願っている。」



「<コロンブス、投資家を探す>  18世紀後期までは世界経済で最も大きな影響力を持っていたのはアジアであり、中国人やイスラム教徒やインド人に比べると、ヨーロッパ人が自由にできる資金は格段に少なかったことも思い出してほしい。」

「近代前期の非ヨーロッパの帝国のほとんどは、ヌルハチやナーディル・シャーのような偉大な征服者によって建国されたか、あるいは清帝国オスマン帝国のようにエリート官僚やエリート軍人によって建国された。

彼らは税金や略奪(この二つを明確に区別しなかった)によって戦争のための資金調達をしたので、信用制度に負うところなどほとんどなく、ましてや銀行家や投資家の利益などまるで気にもかけなかった。」


〇 日本もこちらだと思う。


「ヨーロッパ人の世界征服のための資金調達はしだいに税金よりも信用を通じてなされるようになり、それにつれて資本家が主導権を握るようになっていった。」


「イタリア、フランス、イングランド、そして再度ポルトガルを訪ねては、投資をしてくれそうな人に自分の考えを売り込んだ。だが、そのたびに拒否された。


そこで、統一されたばかりのスペインを収めるフェルナンドとイサベルに賭けてみることにした。コロンブスは経験豊かなロビイストを数人雇い、彼らの助けで、どうにかイサベル女王を説得して投資を承諾させた。

小学生でも知っているように、イサベルの投資は大当たりした。」


「100年後、君主や銀行家たちは、コロンブスの後継者たちに対してはるかに多くの信用供与を行うことをいとわなかったし、アメリカ大陸から得た財宝のおかげで、彼らの手元には自由にできる資金が前よりも多くあった。

同じく重要だったのは、君主や銀行家たちが探検の将来性にはるかに大きな信頼を寄せるようになり、進んでお金を手放す傾向が強まったことだ。」


「1717年、フランスが勅許を与えたミシシッピ会社は、ミシシッピ川下流域の植民地化に着手し、その過程でニューオーリンズという都市を建設した。その野心的な計画に資金を供給するために、ルイ15世の宮廷に強力なつてのあったこの会社は、パリの証券取引所に上場した。(略)


ミシシッピ会社は途方もない富と無限の機会が待っているかのような噂を広めた。フランスの貴族、実業家、都市に暮らす愚鈍な中産階級の人々がこの夢物語に引っかかり、ミシシッピ会社株は天井知らずに跳ね上がった。(略)


数日後、恐慌が始まった。投機家の中に、株価が実態をまったくは寧しておらず、維持不可能だと気づいたものが出たのだ。(略)


小口の投資家たちはすべてを失い、自殺した人も多かった。(略)


1780年代には、祖父の死によって王位についていたルイ16世は、王室の年間予算の半分が借金の利息の支払いに充てられ、自分が破産に向かって進んでいることを知った。


1789年、ルイ16世は不本意ながら、フランスの議会にあたる三部会を一世紀半ぶりに招集し、この危機の解決策を見つけようとした。これを機にフランス革命が始まった。」