読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

私は女性にしか期待しない

「テレビ学校
それは日本で一番大きい学校です。
赤ちゃんから年寄りまで入学できます。
出掛けて行かなくても、先生がきてくれます。
出席はとりません。きいてもいい、きかなくてもいいのです。
朝でも、夜でも好きな時に教室に入れます。


どの学校もこれほど笑わせる学校はありません。美男美女がいっぱいです。
試験はありません。けれども、何となく校則を憶えてしまいます。
学校の校則は三つです。

  しきたりを大事にすること
  人の目につくこと
  人権を尊重しないこと


水戸黄門だの、大岡越前だの、徳川将軍だのと、茶の間で付き合っていると、偉い人の前に平伏したり、男がいばったり、嫁が姑につかえたりするしきたりが、私たちの日常の中にあるみたいな気になります。つき合っている時間からいうと、しきたりに
闘う人を見る現実より、映像を見ている方が多いからです。


学校はたくさんあるので、競争して、生徒を奪い合います。変わったことをして引き付けないと、見てもらえません。
名も知られず、つつましく、平和に生きている市民はドラマになりません。そこに殺人だの、脅迫だの、誘拐だの、詐欺だの、不倫だの、事件が起こってこないとだめなのです。



すでに市民として生きている大人は、まだしも、未成年者は、ドラマの世界を現実の大人の世界と思ってしまいます。
ふつうの市民と市民とは、司会者がタレントに接するように、大げさな身振りや、早口でおしゃべりをするものでありません。司会者がタレントに向っては、卑屈で、たまに登場する素人に向かっては傲慢であるのは、市民のエチケットでありません。


有名になることが、人生の最高であるような印象をきざみこみます。無名のものは、人間として無価値なように思えてきます。
人間はひとりひとりが、自分の生活を選ぶもので、他のものの関わる事でないという人権の思想を失います。


この学校で学ぶことで、はじらいをもってつつましく生きることを知らずに育ちます。この学校がテレビ学校です。
校長先生は企業です。」