「国債増発の臨界点
小林 国債が着実に償還されて行っていく状況なら、国債の売り圧力は強くならないので、市場で大きな混乱は起きないのです。しかし、今の日本では国債がどんどん増発されている。これがインフレ高騰のジェット・コースターを引き起こす根本原因です。
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小林 補正予算を通せば可能です。
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橋爪 国が借金をするという方法はありますか
小林 日銀から借り入れるという方法があります。
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橋爪 なるほど。とすると、お金をつくるには、法律を制定して国債を増発する方法と、日銀からお金を借りる方法と、の二つがあるわけですね。
では、年度途中で、新規の増税を実施することは、ありえますか。
小林 通常の手続きではありえません。しかし、政府や与党の税制調査会を通して発案し、国会で議決を得ることが出来れば可能です。緊急事態であれば、増税だけでなく、公共事業をストップさせる、年金保険料を引き上げるといったことも、法律を通すことで実現可能です。
橋爪 外国から借りるというのはどうでしょう。
小林 円が足りない場合は日銀が日銀券を刷ればいいので、外国から借りる必要はありません。しかし、例えば税制危機が進んで激しい円安になった場合には、日本政府は円の為替レートを安定させる為替介入を行う必要に迫られます。その場合、日本政府は為替市場でドルを売って円を買うことになります。
その時に、日本政府が保有するドルが枯渇すると、ドル売り円買い介入が出来なくなります。もしそうなれば、円安を止められなくなってしまいます。そうした事態に備えて、IMF(国債通貨基金)加盟国はIMFからお金を借りられる制度があります。
橋爪 いくら借りられますか。
小林 IMFの総予算が四〇〇〇億ドル(約四〇兆円)です。これが上限ですが、四〇兆円すべて借りられたとしても、日本経済の規模からすると、いざという時に必要な額には足りないでしょう。
小林 日本は韓国以外の諸外国ともそうした協定を結んでいます。(略)
しかし、日本がクライシスに陥った時には世界経済もおかしくなっているはずですから、他の国もドルを欲しがる可能性が高い。ですから、通過スワップ協定があっても、日本にドルを貸す余力のある国は少ないでしょうね。唯一あり得るのは、中国かもしれません。ただ、中国にとって、日本を援助しても大したメリットはありません。
橋爪 そう、助ける力を持っていても、助ける気はないかもしれない。」