橋爪
国債の
金利が上がると、一番困るのはどういうことですか。
小林
国債の
金利は、企業や個人の借入
金利に連動していますから、中小企業の資金繰りにもすぐ影響が出ます。個人の場合も、たとえば変動
金利型の住宅ローンを組んでいる人であれば、
金利負担が上昇しますから、泣く泣く持ち家を手放さなければならなくなるケースが増えるでしょうね。
橋爪 簡単に言うと借金の利払いの負担が増えるのですね。
小林 その通りです。
(略)
小林 (略)
金融機関にとって、
国債は
不良債権と化してしまうわけです。そうなると、お金を融資する力も弱まってしまう。
橋爪 なぜですか。
小林 金融機関がお金を貸し出せるのは、
自己資本をある程度持っているからです。
自己資本は貸し倒れリスクのバッファー(安全装置)なのです。(略)
その結果、経済全体で見れば、企業の資金繰りが急に苦しくなるわけです。
橋爪 そこは、もう少し伺いたい。
すでに
国債をたくさん
保有している人がいたとします。
金利が上がっても、その人たちが受け取る
国債の利息額は増えないのですか。
小林 増えません。固定
金利型で利払いをすることになっていますから、受け取る額は同じです。
橋爪
市中金利が上がるので、
国債の価格(現在価値)が下がるだけなのですね。
(略)
橋爪 二〇%分、価値が目減りしてしまう。これは大変な数字ですね!
小林 大変な額です。
橋爪
国債を持っている人たち全員が、それぐらい損をする。
小林 そのほとんどが、銀行や信用金庫、
信用組合、保険会社と言った金融機関です。
橋爪
国債の発行残高は一〇〇〇兆円ですから、損失総額を計算して見ると、長期
国債の価値が一〇%下がれば一〇〇兆円の損失、二〇%なら二〇〇兆円の損失になると思います。
小林
バブル崩壊後の日本では、不動産価格の下落によって、数百丁円分の価値が失われましたが、
国債の場合、
金利が二%になると、一〇〇兆円ちかい損失が生まれるはずです。
橋爪 トランプのババ抜きみたいですね。第Ⅰ部でものべましたが、
国債がババで、それを
保有するすべての人が損をする。
(略)
小林 やはり問題は、
信金、信組を含む銀行です。彼らは日々、預金の引き出しに応じなければなりませんから、
国債を
保有しておきたくても、早晩、安値で売却せざるをえなくなるでしょう。」