「銀行の安全装置とは?
橋爪 銀行の企業会計についてうかがいます。
債権の価格はつねに上下しています。銀行はそうした変化を毎日計算し、帳簿をつけ直しているわけではありませんよね。だとすると、「この債券は価格が下がったからまずい」という判断は、どの時点でするのでしょうか。決算みたいに、三カ月に一度とかですか?
小林 はい。四半期に一度は株主に報告をしなければなりません。
小林 気づくでしょうし、マーケットでも直ぐに噂が飛び交うでしょうね。
(略)
橋爪 自己資本比率のルールに違反した場合、罰則はあるんでしょうか。
小林 はい。基準を満たせなければ、金融庁が経営改善計画の提出・実施を求めたり、場合によっては業務停止を命じることもあります。
橋爪 ああ、はい。では、「自己資本」とは何ですか。
小林 総資産から、銀行が負っている固定債務を引いたものです。言い換えれば、総資産から預金を差し引いた分が自己資本となります。
橋爪 国債は、総資産に含まれるわけですか。
小林 はい。ですから、国債の価値が下がれば、資産量も減っていく。
(略)
橋爪 それにしても、総資産に占める自己資本の割合がたった四%でいいというのは、きわめてゆるい基準ではありませんか。
小林 銀行からすれば、預金者から、出来るだけ多くの預金を集めて、貸し出しを積極的に行いたいわけです。その方が、儲かりますから。(略)
小林 いえ、含まれません。自己資本というのはあくまで、負債の一種です。
たとえば、株主に株券を渡して現金をもらい、出資してもらったとします。その現金は銀行の金庫にしまい込まれたりせず、企業や個人に貸し出されている。
橋爪 一般の企業会計と、どこか異なっているのでしょうか。
小林 どちらも基本は同じです。ただ、一般企業の場合は、資産として、金融資産でなく土地や工場等を持っています。それに対して、銀行の資産は貸出と国債という金融資産が主なものです。
橋爪 自己資本比率が四%を下回ってしまうと、銀行は、荒縄で首を絞められるような状態になるのですね。
小林 資産価値が小さくなると、自己資本も自動的に縮小してしまいますから、大変です。」