読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

ジャパン・クライシス

IMF管理で鎮静化?

橋爪   新円を発行するなら、その発行管理権は日本政府に与えず、たとえばIMF国債通貨基金)が持つべきではないでしょうか。さんざん紙幣を印刷しまくったからこうなったわけで、新円でも同じことをやれば、元の木阿弥です。


小林   IMFから外貨を借りて、初年度はそれを使うという手もあります。IMFの予算は四〇〇〇億ドル(約四〇兆円)なので、最大限の数字をいえば、四〇兆円をかりるということでしょうか……。


橋爪   四〇兆円というと、国民一人当たり三〇万円ほどです。当座はしのげる。


小林   しかし、日本経済の規模は大きいので、もしもマーケットから円を売り浴びせられたら、IMFの全予算四〇〇〇億ドルをすべて使っても足りないでしょう。



通貨危機とは異なり、IMFが融資可能な総額は約一〇〇兆円という説もあります(二〇一四年七月三〇日付日本経済新聞「やさしい経済学」佐藤主光・一橋大学教授による)。



一〇〇兆円あれば通貨危機は収まるかもしれません。ここでは、IMF管理になり、また、マーケットからの攻撃も収まったという前提で、新円を発行するシナリオを考えましょう。


IMFオーソライズしてもらった上で、新円を発行し、流通させる。必要があれば、信用の裏付けとなるドルを、IMF経由で貸してもらう。


橋爪   諸外国はそれをどう見るでしょう。


小林   許容せざるを得ないでしょう。
日本政府がIMFから借り入れる額を一〇〇〇億ドルと決め、その限度額まではいつでも貸してもらえるという了解を取り付けることで通貨価値を安定させ、その上で新円を発行する。と同時に財政再建を打ち出す。そうでないと、新円に切り替えても信用されません。


(略)


小林   本来なら、試算制限をするべきなんです。高齢者の中には、収入がなくても何億円もの資産を持っている人がいます。そういう人には「年金はあげません」と言うべきです。


医療においても、高齢富裕層の窓口負担はたとえば五〇%にして、きちんと医療費を払ってもらう。と同時に、資産も所得も少ない高齢者に対しては十分な手当てをするといった改革が必要です。


橋爪   選択的福祉と選択的年金の導入ですね。それによって歳出も圧縮できる。
ただそれでも、必要な歳出カットの半分ぐらいにしかならないのではないでしょうか。


小林   そうでしょうね。


橋爪   地方交付税も廃止すべきでしょう。となると、地方自治体の公共事業がすべてストップしてしまう。


小林   ただ、道路の整備や生活保護費の給付など、削れないものもあります。そうなると、搾りに絞っても、歳出は半分くらいまででしょうか。


橋爪   問題は歳入をどう確保するかです。最初の数年は、税収もさほど見込めません。


小林   国債がデフォルトしていなければ、一〇〇〇兆円分あった発行残高は、ハイパーインフレが終息した時点で、一〇分の一の一〇〇兆円くらいに圧縮されているはずです。そうなれば、財政は非常に楽です。



橋爪   そこから毎年二兆円ずつ返していけば、五〇年で完済できる。これなら皆、納得するでしょう。


小林   それなら国債の利払い費も圧倒的に小さくなります。


橋爪   消費税率はやはり、三互%まで引き上げるべきですよね。


小林   しかし、国債の価値はハイパーインフレで一〇分の一まで縮小していますから、消費税率を三五%まで上げなくてもいいのではないですか。政府の債務残高が一〇〇兆円なら、現行の一〇%で十分だと思います。


橋爪   でも三五%にすれば、その分を福祉に回せます。もう昔のような年金は貰えませんから、低所得高齢者は塗炭の苦しみを味わうことになる。そうした人たちを支援するためにも、さらなる税収が必要です。これは、高齢者が例えば五〇万人自殺うか病死するかしても消費税は一〇%のままにしておくか、それとも税率を三五%にまで引き上げて高齢者を支援するか、という問題なのです。


小林   そういう意味では後者でしょう。


橋爪   国債を償還しつつ、高齢者を支援し、財政赤字を解消する。しかし、この時点で日本人の所得は、現在の一〇分の一ぐらいになっているかもしれない。


小林   インフレにつられて賃金も多少は上がっていると思います。その分を考慮に入れなければ通貨価値が現在の一〇分の一になると、そういうことになりますね。


橋爪   そうすると、海外から輸入しなければならない石油や天然ガスがとても高くなっている。」