「組合は何をしているのか
このような報道姿勢を、当事者であるNHK職員はどう感じているのだろうか。
日放労のホームぺージを見ると、中央委員長見解として、高市総務大臣の電波停止発言問題や「クローズアップ現代」問題などについて声明を出している。かつて、二〇〇四年の一連の不祥事の際には日放労が海老沢会長の辞任を求め、大きな流れを作った。今こそ、日放労に公共放送を正す役割を期待したい。
(3)総選挙報道への「お願い」
海さん前日にテレビ局の官邸記者クラブキャップを招集
二〇一四年一一月二一日、安倍首相は「消費税引き上げ先送りについて、国民の信を問うため」という名目で、突如、衆議院を解散した。この解散による第四七回総選挙は、一二月二日公示、一四日開票で行われることとなった。
その「お願い」とは、以下のような文面だった。
在京テレビキー局各社
編成局長殿
報道局長殿
筆頭副幹事長 荻生田光一
報道局長 福田照
選挙時期における報道の公平中立ならびに公正の確保についてのお願い
日頃より大変お世話になっております。
さて、ご承知の通り、衆議院は名1日に解散され、総選挙が12月二日公示、14日投開票の予定で挙行される見通しとなっております。
つきましては、公平中立、公正を旨とする報道各社の皆様にこちらからあらためてお願い申し上げるのも不遜とは存じますが、これから選挙が行われるまでの期間におきましては、さらに一層の公平中立、公正な報道姿勢にご留意いただきたくお願い申し上げます。
特に、衆議院選挙は短期間であり、報道の内容が選挙の帰趨に大きく影響しかねないことは皆さまもご理解頂けるところと存じます。また、かこにおいては、具体名は差し控えますが、あるテレビ局が政権交代実現を画策して偏向報道を行い、それを事実として認めて誇り、大きな社会問題となった事例も現実にあったところです。
したがいまして、私どもとしましては、
・出演者の発言回数及び時間等については公平を期していただきたいこと
・ゲスト出演者等の選定についても公平中立、公正を期していただきたいこと
・テーマについて特定の立場から特定政党出演者への意見の集中などがないよう、
公平中立、公正を期していただきたいこと
・街角インタビュー、資料映像等で一方的な意見に偏る、あるいは特定の政治的立場が強調されることのないよう、公平中立、公正を期していただきたいこと
――― 等について特段のご配慮をいただきたく、お願い申し上げる次第です。
異常、ご無礼の段、ご容赦賜り、なにとぞよろしくお願い申し上げます。
この中で「あるテレビ局が政権交代実現を画策して偏向報道を行い、それを事実として認めて誇り、大きな社会問題となった事例も現実にあった」とするのは、前述の一 九九三年のテレビ朝日報道局長発言問題を指しているのだろう。
だが、本書第二章で検証したように、「偏向報道を行い」と決めつけるのは明らかな事実誤認である。このような、事実と異なる認識を文面に書く無神経さが、安倍政権のメディア対応の特徴でもある。(略)
詳しくは後述するが、この「お願い」以降、ワイドショーなどでの総選挙関連の報道量は激減した。また、総選挙をテーマとしたテレビ朝日系の「朝まで生テレビ!」は、急遽、政治家のみの出演に変更となり、予定していた評論家や文化人の出演を取りやめた。」