読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

フランスはどう少子化を克服したか

「公的な保育園第一号が誕生したのは1844年、パリ。」


「労働者階級の悲劇を前に行動を起こしたのが、パリ一区副区長のフィルマン・マルボーでした。「保育量は安く、健康的な環境で、知見に基づいた世話を施す。幼児に易しい、改善された託児施設」。そう願って設立した保育園は、行政や報道機関、学者の間でも非常に好意的に受け入れられたといいます。」



「「母子を分離させるのは保育園ではなく、家庭外での労働であり、生きるために母親が労働から収入を得なければならない状況である。保育園は、現状への最良の処方箋だ。

乳児院に送るより母子分離は少ない。子守の家でより、保育園の方が良い世話を受けられる。親たちには金銭的な援助より、働くことへの援助の方が望ましい。働くことなく得る金が意欲を削ぐことは、あまりにも多い。労働で得られる収入は、施しよりも健全だ。」

「幼児を一か所に集めることの危険は、知恵と規則で回避できる。子供たちは保育園の敷地内で一日を過ごし、幼児がいない間、保育室は絶えず換気される。

病気の子どもは受け入れない。保育園は多くの場合、労働者の家庭より良い衛生状態に保たれている」
「保育園の維持費は、仕事を辞めた母親と子供が食べて行けるようにするだけの援助金を渡すより、額が少なくて済む。援助金を受け取った母親が、自宅で子供を見ている保証すらないのだから」
(「新辞典」、著者訳)

そして同書は、当時保育園で育った子供たちについて「乳児院や自宅で育った子供たちよりも健康で、生存率が高かった」と結論付けています。」



「ここは集団の場ですからね。原則が違うんです。(略)

私たちの仕事の基本は、保育園で過ごす間、子どもたちがそれぞれ尊重されていること、愛情を受けていると感じられるようにすることです。そして自宅以外の場所での他者との生活から、知覚の目覚めを促すこと。

それ以外のことは二の次なんです。これは保育関連の学校でも、まず教え込まれることなのですよ」


「3歳未満の幼児数に対して全国の保育園定員数は役16%と、絶対数が少ないのです。」


「万が一落選した場合、そこから新たな預け先を探していては遅いので、同時進行で別の保育手段を探しておきます。

そしてその「保育園以外の保育手段」の方が、実は、フランスでは多数派なのです。その代表格が母親アシスタント、認可を得た成人が、j非宅で数名の子どもを預かる少人数保育です。」



「最初から保育園枠は考えず、母親アシスタントや共同ベビーシッターを探す人も少なからずいます。フランスでは合法な契約であれば、保育園以外の保育手段にも補助金が与えられるので、そちらを選ぶ心理的なハードルが低くなっているのです。」


「フランスの上流階級では長きにわたり、女性は「美しい女」であり続けることが「母親」の役割よりも優先されました。」


「加えて、母子保護センターによる複数回の訪問と面接で、フランス語能力や保育適正、保護者とのコミュニケーション能力、健康状態、自宅の衛星安全性、同居家族の犯罪歴などの審査が行われます。

その他に重視されるのが、志望動機。」



「母子保護センターの統計によると、2013年、母親アシスタントの認可取得者は45万人以上で、実際に活動しているのは32万6千人。フランス社会では身近な存在で、私が以前住んでいたパリ郊外のマンションでも、下の階の奥さんが母親アシスタントをしていました。」


「それらを改善するための鍵は、母親アシスタントも国家資格にすること。認可制から、一歩踏み込んで、その教育にも国が関わること。母親アシスタントは今、その段階に来ていると感じています。」


〇私も第一子を産んだ時、同じ職場の人から紹介された職場近くに住む「おばさん」に子どもを預かってもらうことにしました。生まれる前は、簡単に考えていたのですが、実際に生まれて預けるとなると、生後2か月のまだ首も座らない子を預けるのが本当に辛かった。

そこには、同じ頃生まれたもう一人の赤ちゃんも預けられていて、うちの子とその子の二人がメンバーでした。

おばさんは子育ての経験もあり、良い人だったのですが、育児書にある子育てとは
程遠いやり方で、母親初心者の私としては不安がいっぱいでした。

まず、職場の休憩時間に、授乳をさせようと行ってみると、赤ちゃん用椅子に座らせられたまま、哺乳瓶でミルクを与えられていました。
(育児書には、必ず抱っこしてあげるように、となっています。)

しかも、ある日、行ったその瞬間に、ソファー(ひとり掛け用)に寝かせられていたうちの子が、おばさんがもう一人の子を見ている間に、足を動かし、ソファーから落ちる、というのを目撃してしまったのです。

頭から落ちたので、心配でたまりません。因果関係はわかりませんが、その後発熱したので、大急ぎで病院に連れて行き、大泉門が腫れているけれど、その他の問題はない、と言われて帰宅しました。

また、一日二回分の粉ミルクを容器に入れて渡していたのですが、いつも、一回分しか飲んでいなくて、家に帰ると、気が狂ったようにミルクを飲みます。

不信感がどんどん強まり、その他の事情もあり、私は仕事を辞めて自分で子育てをすることにしました。


「母親アシスタントのメリットは、保育園よりも枠を得られる確率が高いことと、少人数保育の環境です。母子保護センターが管轄している、という安心感もあります。

デメリットは、保育人員が一人なので、母親アシスタントが病気になった場合には代理が居ないこと。長期の療養が必要になった場合は、別の母親アシスタントを短期契約で雇わなければなりません。」


「そして、大前提として、よく知らない他人の家に我が子を長時間預けるのを望まない家庭もあります。

そこで代案となるのが、共同ベビーシッターです。」


「保育手段と保護者の支払額(保育時間月162時間としての平均概算、保育園のみ上限)

保育園        5万8千円
母親アシスタント   10万9千円
個人シッター     25万7千円

(略)
が、そこは平等を国の理想に掲げるフランス。この格差を補填するため、母親アシスタントや個人シッターを使う場合、家族手当金庫から補助金が支給されるのです。」



「それでも社会問題となるほどの不満が出ないのは、保育園以外の保育オプションをんでも、補助金がしっかり支給されるから。」


「母親アシスタントは現時点で、国の負担が最も少なくて済む保育対策なのです。」



「前述した物理的・経済的負担の軽さに加え、フランスでは乳幼児期の団体生活こそが子供の社会性を養うという考え方があり、保育園は3歳全入の保育学校への良い下地作りの場とも見られているからです。」


「バビル―の方法はいわば、保育支援の新しいアウトソーシングです。企業は設備投資することなく保育枠を従業員に提供でき、従業員は自宅近くに預け先を確保できるようになりました。」


「重要なのは保育ママを「どこの誰ともわからない近所のおばさん」ではなく、専門知識を持ったプロとして扱うこと。そして社会全体が広くそれを認識することです。」



「バビル―は、ここ数年のうち、日本進出も視野に入れているといいます。」