読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

日本中枢の崩壊

財務省と手を結ぶしかなかった秘密

(略)
この財務省のシナリオに沿って、鳩山政権から引き継いだ菅政権は消費税増税を口にした。ところが、菅氏は増税に関して、「少なくとも三年後の選挙で国民の信を問う」と国民に約束した。ある意味うまい戦略だと思った。


財務省からすると、これで増税実現までのハードルが高くなった。民主党政権増税をやらせるには、民主党政権を維持させ、なおかつ総選挙にも勝たせなければならなくなったからだ。



菅発言は、「俺たちも死に物狂いでやるから、財務省も死に物狂いで俺たちを支えろ。でないと、増税は実現しないぞ」という財務省へのメッセージでもある。(略)



民主党財務省が手を組んだとはいえ、菅政権は消費税増税を餌に政権維持を助けろ、と財務省を踊らそうとしていただけ。また財務省にしても、助けるふりをして、最後に増税さえできればいいと考えていた。場合によっては、菅政権を潰して増税への捨て石にする、それくらいのことは考えていたはずだ。



時の政権と財務省の関係はしょせん狐と狸の化かし合いだ。(略)




誕生直後の絶好機を逃した鳩山政権

脱官僚の最大の好機は、民主党政権が誕生した直後だった。(略)
霞が関を改革する一つのポイントは役人の評価基準にある。(略)
いまは、役所のために予算を増やしたり、規制を作って天下りポストを多くした者が評価される。



「あそこまで省益を太らせるとは、あいつはワルだなあ」は、官庁では誉め言葉である。そういう「ワル」にはマイナス評価しかつかないよう変えなければならない。(略)



総理や大臣が「公益法人への天下りポストも予算も半減しろ」と命令し、「これを真面目にやった者は昇進させる。しかし、できなかった者は脳力がないと判断して干す」という。
干すといわれれば、役人はけっこう真面目に取り組むものだ。



ただし、これをやるためには一つ要件がある。それは、政権がしばらく続く、そして大臣も交代しない、という前提である。来年どうせ政権や大臣が代わると思えば、大臣の言うことは聞かない。下手に指示に従い、次に来た大臣の方針が変わって梯子を外されれば、次官や官房長は役所の利益に反する行動を取ったとして、マイナス評価を付ける可能性が高いからだ。(略)


ところが、鳩山政権がやったことは真逆だった。政権交代前、農水省の次官は、民主党マニフェストに書かれていた農業政策を公然と批判していた。政権誕生後、お互いに政策論争をしたのならまだしも、農水の次官が掌を返して「誠心誠意やります」というと、赤松広隆農水相は即座に、「ぜひ、一緒にやってくれ」と応じた。これでは完全に役人のご機嫌取りである。(略)




役人とマスコミに追い落とされた長妻大臣

そんななか、民主党政権の閣僚のなかで唯一、野党時代の方針を貫こうとしたのは、先述した長妻昭氏である。(略)




だが長妻氏も、年金以外の分野でも、勉強しているうちにだんだん自分の考えを持つようになり、仙谷氏の意見に従わないことも多くなった。(略)
仙谷氏にとって長妻氏は徐々に煙たい存在になっていった。



一方、厚労省の役人も、たの閣僚と違って役所に擦り寄らず、政治主導を貫こうとする長妻氏に手を焼いていた。(略)
このリストを見て、長妻氏は、これはおかしい、理由が分からない、と一人だけ頑としてこれを認めなかった。(略)




就任以来、方針を曲げず、原則を押し通そうとする長妻氏と厚労省の役人の意思疎通は、それまでも上手く行っていなかった。そこに、長妻氏の追加リスト拒否である。溜まっていた厚労省の役人の不満のマグマが一気に噴出し、官邸にSOSを出しただけでなく、マスコミを通じて反撃に出た。




曰く、「職人に対する指示がサディスティックで、パワハラまがいのいじめもあり、職員には不信感が募っている」「政治主導の意味をはき違えている」_ 。



たとえばある報道は、長妻氏は冷酷な性格で、「警護官を雨の中、家の前に一晩中立たせていた」と書いた。大臣の自宅の前には、就任中、警護用のポリスボックスが仮設される。警護官にとって、立って見張りをするそのこと自体が仕事だ。しかも、二時間交代する決まりになっているという。


なのに、あたかも長妻氏が指示したかのように、「雨の中、一晩中立たせていた」と書く。警護官を家族に挨拶させなかったといった、どうでもいいことさえ、悪口の材料にされた。(略)




普通、大臣に関する批判が出れば、マスコミは大臣に取材し、裏を取る。それもやらずに一方的に、記事をでっちあげて叩く。厚労省の役人と記者クラブがタッグを組んで、長妻追い落としに動いたのは、明らかだろう。(略)



実は、長妻氏追い落としには、さらに裏の話がある。大臣就任期間に、「長妻は、こんなひどいことをやっている」として、長妻氏の仕打ちを列挙したメールが出回った。私は持っていないが、多くの記者が手にしていた。彼らはそれをどこから入手したか_財務省の主計局からである。




厚労省が出所であれば、内輪もめだということになり、厚労省の役人も悪者になりかねない。財務省がやんわりと「なんだかひどいらしいですなあ」とやれば、真実味も増すし、記者も飛びつきやすいという巧妙な作戦である。」


〇 官僚もマスコミも、本来エリート中のエリート。その人たちが、エネルギーをこちら方面(策略陰謀で政治家を追い落とすこと)に使っているのだもの、国がおかしくなるのも当然だと思う。