読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

昭和天皇の研究  その実像を探る

〇 何故私たち日本人は、こんな人々なのか… それがずっと

気になっています。昔は、教育が行き届いていなかったから、アホだったのだ…と思っていました。でも、今もなお、戦前と同じ過ちを繰り返している日本人を見て、もっと違う理由があるのでは…?と思うようになりました。

 

そこで、日本人の精神構造を知りたいと、「武士道」を読んでみました。更に、三島由紀夫の「葉隠入門」なども読んだのですが、何故、三島がこの本にこれほど魅了されていたのか、私には全くわかりませんでした。そこで、岩波文庫の「葉隠」を読もうか…と思ったのですが、

私の力では、歯が立ちません。古文に近い文章が難しすぎて、理解できません。

 

しょうがなく、この山本七平著「昭和天皇の研究  その実像を探る」を読み始めました。これが、とても面白い。山本七平氏の本は、私にとって、まさにそこが知りたいと思えることがしっかり書かれていて、嬉しいです。

 

「まえがき

 

考えてみれば全く稀有の存在である。人類史上おそらく前例がなく、今後も再びこのような生涯を送る人物は現れまい、と思われるのが昭和天皇である。(略)

 

 

この「天皇論の研究」は、日本人の深層心理を探求するうえで、きわめて興味深い主題である。しかしそれを明らかにするには、まず一人間としての「昭和天皇の自己規定」を解明しなければならない。

 

 

本書はその「天皇の自己規定」の「研究」であっても、私の「天皇論」ではない。各人が各人の「天皇論」を持つことは自由である。しかし「天皇は自分の天皇論どおりに動くロボットであらねばならないと考えるなら、二・二六事件の将校と同じことになるであろう。

 

 

天皇を「象徴」と規定した最初の人は、おそらく津田左右吉博士で大正年間のことだが、皮肉なことに、それと対立する二・二六事件の将校もまた、天皇は「自らの天皇論の象徴」で、重臣を一掃してそれを「意志なき自らの徽章」とすれば目的が達せられると考えていた。

 

 

ところが彼らは天皇の断固たる「自己規定」の前に潰え去る。首謀者・磯部浅一天皇を呪いに呪っても不思議ではない。本書はいわば「天皇論と激突した天皇の自己規定」の研究である。私はあらゆる「天皇論」の前に、まず「天皇の自己規定」の研究があるべきだと思っている。

 

 

本書を書き始めたのは、昭和天皇崩御のはるか以前であり、したがって本書で「天皇」と記しているのは「昭和天皇」の意味であることをお断りしておく。(略)

 

 

平成元年一月二十一日    

                   山本七平    」