読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

国体論 ー菊と星条旗—

「▼ 「愚かしい右翼」の台頭

自民党所属国会議員である山田宏は、二〇一八年一月一六日に自らのツイッター・アカウント上で、次のように書いている。

 

 

沖縄県名護市長選挙が始まる。翁長知事の「オール沖縄」という名の親中反米反日

勢力と共にある現職は、名護市政をすっかり停滞させてしまった。沖縄を反日グループから取り戻す大事な選挙。

 

 

(略)

一九八〇年代に中曽根康弘政権のブレーンを務めた政治学者の香山健一は、当時次のように述べていた。

 

 

左翼が強く、我が国にも社会主義政権が成立する危険が現実に存在し、また周辺の国際環境も冷戦とアジア共産主義の勃興、浸透が進んでいた一時期に、我が国の政権党であった自由民主党が戦前保守と戦後保守の大連合、リベラルと右翼的諸勢力の連合という形で辛うじて多数派を形成しなければならない時期があったことは政治の現実ではありますが、衆参同日選挙に示された民意は自由民主党が左右翼両翼を切って新たな健全な国民的多数派を形成しつつあることを明確に示しております。

 

 

労働組合のなかの自民党支持率も急上昇しつつあります。このようなことを考慮に入れますと、我が国社会の一部に存在する右翼的勢力 ― それは第一に戦争と侵略への深い反省がなく、第二に日本の国体、精神文化の伝統について全く誤った、ゆがんだ固定観念に凝り固まっており、第三に国際的視野も、歴史への責任感も欠いております。こうした愚かしい右翼の存在と二重写しにされることは馬鹿馬鹿しいことだと思います。

 

 

この一節は、戦後の穏健で理性的であることを親米保守派が何を見落としてきたかを赤裸々に物語っている。まず、前半部において、香山は、自らがコミットしている政治勢力が旧ファシスト勢力(「戦前保守」「右翼的諸勢力」)と手を結んだことを率直に認めている。(略)

 

 

 

つまり、共産主義はもはや脅威ではない。したがっていまや、かつて緊急措置として結ばれた旧ファシストとの同盟を解消しなければならない。なぜなら彼らは、どうしようもなく愚劣だからだ、と。

 

 

このような香山の認識が示されてから三十余年を経て、自民党は「愚かしい右翼」によって占拠されるに至った。(略)

 

 

なぜこのような悲惨な結果が招かれたのか。それは合理的な親米保守が「愚かしい右翼」をついに粛清しなかったからであり、そのことは「戦後保守」が自らを「戦前保守」から隔てるべき決定的な差異を自覚できなかったことを意味するだろう。

 

 

この無自覚は、「戦前保守」と「戦後保守」には明確な違いがあるとの香山の見方とはむしろ逆に、両者はシームレスにつながっていることを示唆する。

そして、そのつながりの核心とは、論じてきたように「国体護持」である。(略)

 

 

香山のような、合理的親米保守派の立場から「戦後保守」の旧ファシスト勢力との共犯の事実を正面から批判した者でさえ、その意味の重大性を見通すことが出来なかったし、今日でも「親米路線の合理性」を語る論者たちにおいて状況は同じである。」