読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

白井聡

国体論 ー菊と星条旗—

「3 再び「お言葉」をめぐって ▼7歴史の転換と「天皇の言葉」 本書で見てきた「戦後の国体」の崩壊過程における危機という文脈は、第一章で論じた、今上天皇による異例のメッセージ、「お言葉」が発せられた文脈でもある。だからこそ、あのメッセージを見聞…

国体論 ー菊と星条旗—

「▼天皇制平和主義 そして、かかる振舞もやはり、「戦後の国体」の起源に関わっている。「天皇制民主主義」を指摘したジョン・ダワーは、戦後日本の国是となった平和主義の始発点に関して、鋭くも次のように指摘している。 マッカーサーは日本人に古い残存物…

国体論 ー菊と星条旗—

「自民党政権の本質が、「戦後の国体」としての永続敗戦レジームの手段を選ばない死守であることに照らせば、戦後日本に経済的繁栄をかつてもたらした要因としての戦争に、同レジームが再び依存しようとしたとしても、何ら驚くべきことではない。実際、その…

国体論 ー菊と星条旗—

「2 国体がもたらす破滅 ▼ 破滅はどのように具体化するか かくして、「戦後の国体」の幻想的観念は、強力に作用し社会を破壊してきた。論理的に言って、その果てに待つのは破滅であるほかないであろう。それがどのようなかたち― たとえば、経済危機とそれに…

国体論 ー菊と星条旗—

「終章 国体の幻想とその力 1 国体の幻想的観念 ▼「国体」の再定義 以上、われわれは駆け足で「国体」の二度にわたる形成・発展・崩壊の歴史をたどってきた。(略) ところで、戦後に天皇制を語る際に繰り返し参照されてきた、「一木一草に天皇制がある」と…

国体論 ー菊と星条旗—

「4 ふたつのアイデンティティー ▼改憲論争の盲点 (略) しかし、本書の議論からすれば、「改憲か護憲か」という問題設定は、疑似問題にすぎない。第五章で論じたように、最高法規であるはずの日本国憲法の上位に、日米安保条約とそれに付随する日米地位協…

国体論 ー菊と星条旗—

「▼ 新しい「皇道」 (略) 彼の常識では、辺野古新基地建設に反対する翁長雄志沖縄県知事をはじめとする「オール沖縄」は、「親中」で「反米」で「反日」であるということらしい。(略) ここにおいて「反日=反米」、したがって逆に言えば、「愛国=親米」…

国体論 ー菊と星条旗—

「▼ 「愚かしい右翼」の台頭 自民党所属国会議員である山田宏は、二〇一八年一月一六日に自らのツイッター・アカウント上で、次のように書いている。 沖縄県名護市長選挙が始まる。翁長知事の「オール沖縄」という名の親中反米反日 勢力と共にある現職は、名…

国体論 ー菊と星条旗—

「3 隷属とその否認 ▼奴隷の楽園 しかし、ヘゲモニー国家は軍事的にも最強国であるという一般的な原則は、現在の日本がこれまで踏襲してきた対米従属路線をさらに追及しなければならない理由にはならない。 端的に言えば、日本の対米従属の問題性の核心は、…

国体論 ー菊と星条旗—

「2 異様さを増す対米従属 ▼ 収奪攻勢としてのグローバリゼーション (略) これらすべては、「グローバリゼーションへの対応・推進」の名の下に、アメリカに本拠地を持つ場合の多いグローバル企業が日本の企業へ参入する道筋をつくるものだった。(略) つ…

国体論 ー菊と星条旗—

「▼なぜアメリカから日本にヘゲモニー交代が起きなかったのか 問題は、この過程がどのように日本の「戦後の国体」に作用してきたのか、そして逆に日本の存在がこの過程にどのように作用してきたのか、ということである。 ウォーラースティンを筆頭とする世界…

国体論 ー菊と星条旗—

「第八章「日本のアメリカ」 ― 「戦後の国体」の終着点 (戦後レジーム:相対的安定期~崩壊期) 1 衰退するアメリカ、偉大なるアメリカ ▼ 衰退するアメリカとヘゲモニー維持の謎 世界システム論の論客に、経済史家のジョヴァンニ・アリギがいる。彼の主著…

国体論 ー菊と星条旗—

「▼ 磯部浅一における国体 青年将校のうちで北一輝の理論を最も強く信奉していたと見られる磯部浅一は、天皇が自分たちに共感するどころか激怒していることを知り、「獄中手記」 に、天皇への激しい呪詛の言葉を書き連ねることとなる。(略) 磯部浅一が遺し…

国体論 ー菊と星条旗—

「4 天皇制とマルクス主義者 ▼急進化する大正デモクラシーと治安維持法 (略) 一九二二年には堺利彦・山川均・荒畑寒村ら古参の社会主義者たちによって日本共産党が地下組織として結成されるが、その背景には、一九一九年にコミンテルン(第三インターナシ…

国体論 ー菊と星条旗—

「▼ 匿名の人間による「デモクラティックな暗殺」 橋川文三は、朝日の遺書を分析してこの暗殺事件の質的な新しさを指摘している。 (略) ここに例示されている紀尾井坂の変(大久保利通暗殺)の実行者は、旧武士階級という身分を代表して大久保を斬った。あ…

国体論 ー菊と星条旗—

「▼ 徳富蘆花の議論の先見性 (略) すなわち、「よくない天皇の周囲」=「君側の奸」を討てば、「本来の天皇の政治」が実現するはずだという論理である。 この二点において、蘆花の議論は予見的であった。しかし、とにもかくにも、幸徳秋水は天皇から抱擁さ…

国体論 ー菊と星条旗—

「「2 明治レジームの動揺と挫折 ▼「臣民としての国民」から「個人と大衆」へ 第三章に述べた通り、日露戦争の終結から大逆事件に至る時代は、「戦前の国体」の「形成期」から「相対的安定期」への転換期にほかならなかった。(略) しかし、この転換期の時…

国体論 ー菊と星条旗—

「第七章 国体の不可視化から崩壊へ (戦前レジーム:相対的安定期~崩壊期) 1戦前・戦後「相対的安定期」の共通性 ▼「戦前レジーム」と「戦後レジーム」の並行性 (略) 両時期には、次のような四つの共通点を見いだすことができる。 ① 国体の不可視化と…

国体論 ー菊と星条旗—

「▼第二、第三の<狼> 先にも述べたように、東アジア反日武装戦線を世論は激しく指弾した。(略) このように、彼らは世間から理解を拒否されることをもとより覚悟していたわけだが、その予想通りに、鈴木邦男の言葉によれば、マスコミは「「彼らは気違いだ…

国体論 ー菊と星条旗—

「▼私的幸福への沈潜と公なるものに対するニヒリズム (略) 吉本の考えでは、戦後民主主義なるものに成果があるとすれば、それは、戦争体験と敗戦直後の経験を通じて、「天下国家・公なるもの」の欺瞞性を日本人が徹底的に認識し、国家によってであれ、「公…

国体論 ー菊と星条旗—

「▼六〇年安保 (略)近代前半の第一期とのアナロジーで言えば、一九六〇年は、一八八九年の大日本帝国憲法発布前後の状況に擬えることができる。すなわち、レジームが根本的な不安定性を克服し、潜在していた「別の理想」の実現可能性を無効化するに至った…

国体論 ー菊と星条旗—

「第六章 「理想の時代」とその蹉跌 (戦後レジーム:形成期③) 1 焼け跡・闇市から「戦後の国体」の確立へ ▼理想の時代 前章で見てきた「国体を護持した敗戦」と占領、講和条約の発効、日米安保体制の成立にまつわる政治神学的過程の進行と並行して、この…

国体論 ー菊と星条旗—

「▼ 昭和天皇の「言葉のアヤ」発言 (略) あまりに重い戦争責任の問題を「言葉のアヤ」と呼んだことには、ある種の過剰性が感じられる。(略) なぜなら、国体護持のために日米合作でつくられた物語は、「天皇に戦争責任はない」と政治的に決めたのである。…

国体論 ー菊と星条旗—

「4 征夷するアメリカ ▼征夷大将軍マッカーサーという物語 かくて、敗戦と混乱、被占領という危機を乗り越えて、初期戦後レジームの骨格、すなわち、日米安保条約を基礎とする微温的な反共主義体制が結果的に成立するが、そこから遡及的に見れば、マッカーサ…

国体論 ー菊と星条旗—

「▼「新しい国体」と新憲法制定 この統治構造は、新憲法(日本国憲法)の制定過程にもよく表れている。 (略) 言い換えれば、国体の頂点を占めるGHQ(=連合国、実質的にアメリカであり、より実質的にはマッカーサー)が、天皇を通じて主権を行使する、とい…

国体論 ー菊と星条旗—

「3国体のフルモデルチェンジ ▼「八月革命」の真相 ― 天皇からGHQへの主権の移動 それでもこの間、日本国の許に主権がなかったからといって、主権そのものが蒸発していたわけではない。いやしくも、何がしかの決定が実効的になされうる政治秩序が存在するの…

国体論 ー菊と星条旗—

「▼不可視化され、否認された「主権の制限」 かつ、この問題は、占領が終わることによって自動的に解消されたものでもない。 サンフランシスコ講和条約の発効による占領の終結は、バーンズ回答に言う、「最終的ノ日本国政治ノ形態」が「日本国民ノ自由ニ表明…

国体論 ー菊と星条旗—

「第五章 国外護持の政治神学 (戦後レジーム:形成期②) 1ポツダム宣言受諾と国体護持 ▼「国体護持」の実相 ポツダム宣言受諾の際、日本側が付けようとした唯一の降伏条件として「国体護持」が問題となったことはよく知られている。 (略) この過程が意味…

国体論 ー菊と星条旗—

「▼なぜ日本人はこの神話を手放さないのか (略) それは、この神話を信じたい動機が戦後の日本人にあるからだろう。その動機とは、自分たちの戴く君主が高潔な人格の持ち主であってほしいという願望だけではない。天皇の高潔さにマッカーサーが感動し、天皇…

国体論 ー菊と星条旗—

「第四章 菊と星条旗の結合 ―「戦後の国体」の起源 (戦後レジーム:形成期①) 1「理解と敬愛」の神話 ▼「戦後の国体」の起源 ― 昭和天皇・マッカーサー会見 (略) 戦前と戦後、このふたつの「国体」がどのように違い、何が継続しているのかを見るには、そ…