読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

サピエンス全史 下

「<バイオニック生命体> ある意味で、現代人のほぼ全員がバイオニックだ。何故なら私たちの生来の感覚や昨日は、眼鏡やペースメーカー、矯正器具、果てはコンピューターや携帯電話(この二つは、脳によるデータの保存と処理の負担を軽減してくれる)まで、さまざまな装置によって補強されているからだ。」



「政府が資金提供しているドイツのレティナ・インプラント社は、目の不自由な人が部分的に視力を獲得することを可能にする網膜プロテーゼを開発している。まず、目の不自由な人の目の内部に小さなマイクロチップを埋め込む。

目に当たる光を光電池が吸収して電気エネルギーに変換し、それで網膜に残っている健全な細胞を刺激する。刺激を受けた細胞の神経インパルスが脳を刺激し、それが視覚に変換される。

現時点で、このテクノロジーを使うと、目が不自由だった人は自分の向きを見定めたり、文字を判読したり、さらには顔を認識したりさえできる。」



「心が集合的なものになったら、自己や性別のアイデンティティなどの概念はどうなるのか? どうしたら、汝自身を知ることができるだろう?(略)

あまりに根本的に違い過ぎて、それが持つ哲学的意味合いも、心理的意味合いも、政治的意味合いも、私たちには到底把握できない。」


「<別の生命>  今日のコンピューターサイエンスの世界でとりわけ興味深いのが、遺伝的プログラミングの領域だ。そこでは、遺伝進化の手法を模倣する試みがなされている。

多くのプログラマーは、作り手から完全に独立して、自由に学習したり進化したりできるプログラムを生み出すことを夢見ている。それが実現すれば、プログラマーはプリムㇺ・モビーレ、すなわち原動力ではあっても、その創作物は、創作者も他の誰もが予想しえなかった方向に自由に進化することになる。」


「それらは生き物なのだろうか?それは「生物」という言葉で何を意味するか次第だ。いずれにしてもそれらは、有機的な進化の法則や制約とは完全に無関係に、新たな進化の過程によって生み出されたことは間違いない。」


「2005年に始まったヒューマン・ブレイン・プロジェクトは、コンピューター内の電子回路に脳の神経ネットワークを模倣させることで、コンピューターの中に完全な人間の脳を再現することを目指している。

このプロジェクトの責任者によれば、適切な資金提供を受けたなら、10年か20年ちに人間とほとんど同じように話したり振舞ったりできる、人口の人間の脳をコンピューターの中に完成させられるという。」



「<特異点> ヒトゲノムを初めて解析するのには、15年の月日と30億ドルの費用がかかった。今日では、人間一人のDNAを解析するのには、数週間と数百ドルしかかからない。」



「保険会社は私たちのDNAのスキャンを求め、無謀な行動をする遺伝的傾向が見つかれば、料金を値上げする権利があるのだろうか? 就職を希望する時には雇用主に履歴書ではなくDNAをファックスすることを求められるのだろうか?」



「現代世界は、歴史上初めて全人類の基本的平等性を認めたことを誇りとしているが、これまでで最も不平等な社会を生み出そうとしているところなのかもしれない。」


「私たちは新たな特異点に急速に近づいているのかもしれない。その時点では、私、あなた、男性、女性、愛、憎しみといった、私たちの世界に意義を与えているもののいっさいが、意味を持たなくなる。」



「<フランケンシュタインの予言>  フランケンシュタイン博士が恐ろしい怪物を生み出し、自らを救うために私たちがその怪物を抹殺しなければならなかったという発想に、私たちはなぜかほっとする。

私たちがそういう形でこの物語を語りたがるのは、私たちこそが最高の存在で、自分たちに優る存在はかつてなかったし、今後も決して現れないだろうことを、それが意味しているからだ。


私たちを改良しようとする試みは必ずや失敗に終わる、なぜなら、たとえ私たちの肉体は改良できても、人間の精神には手をつけられないから、というわけだ。」



「私たちが真剣に受け止めなければいけないのは、歴史の次の段階には、テクノロジーや組織の変化だけではなく、人間の意識とアイデンティティの根本的な変化も含まれるという考えだ。」



「もし本当にサピエンスの歴史に幕が下りようとしているのだとしたら、その終末期の一世代に属する私たちは、最後にもう一つだけ疑問に答えるために時間を割くべきだろう。

その疑問とは、私たちは何になりたいのか、だ。「人間強化問題」と呼ばれることもあるこの疑問は、現在、政治家や哲学者、学者、一般人がしきりに行っているさまざまな議論とは桁違いに重要だ。

なにしろ、今日の宗教やイデオロギー、国民、階級それぞれの間で戦わされる今日の議論は、ほぼ間違いなくホモ・サピエンスとともに消滅するのだから。」


「唯一私たちに試みられるのは、科学が進もうとしている方向に影響を与えることだ。私たちが自分の欲望を操作できるようになる日は近いかもしれないので、ひょっとすると、私たちが直面している真の疑問は、「私たちは何になりたいのか?」ではなく、「私たちは何を望みたいのか?」かもしれない。この疑問に思わず頭を抱えない人は、おそらくまだ、それについて十分考えていないのだろう。」


〇「私たち」というのが問題です。「私は何を望みたいのか」については、
誰でも答えられます。
でも、「私たちは…」となると誰がどういう根拠で答えるのか。

たった一国の、この日本の問題についてすら、「私たちはどう考えるのか」について、答えを出せずにいます。


「サピエンス全史 下」はここで終わりになりますが、最初の頃に、とばしたページがあるので、次回はそこに戻ります。でも、あと少しで終わりです。