「O それは明らかにフィクションと言いますか神話的です。しかし、旧約聖書は、そういうところからだんだん、実際にあった話がそれなりに伝承されて文字になったものだろうと解釈できる部分へと、つまり本当の歴史へと変わって行きます。
島国で安全だった日本とは、まるで正反対なんです。(略)
これが、それなりにユダヤ教らしくなったのは、ずっと時代が下って、バビロン捕囚(紀元前597~前538年)の前後。すっかりユダヤ教になったのは、イエス・キリストより後かもしれない。ローマ軍の手でエルサレムの神殿が壊されて、ユダヤ民族は世界中に散らされてしまったんですね。神殿がなくなったので、律法を重視するいまのユダヤ教の形が確定した。というわけで、千五百年ぐらいかけて、徐々に成立しているんです。
ヤハウェは最初、シナイ半島辺りで信じられていた、自然現象(火山?)をかたどった神だった。「破壊」「怒り」の神、腕っぷしの強い神だったらしい。そこで、「戦争の神」にちょうどいい。イスラエルの人々は、周辺民族と戦争しなければならなかったので、ヤハウェを信じるようになった。(略)
イスラエルの民がそのもとにまとまった。
この「イスラエルの民」が元はどんな人々だったか、実はよくわかりません。肥沃な低地を見下ろす山地に住み、羊や牛や山羊を飼っていた。人種も文化もまちまちなグループの寄り合い所帯だったらしい。
逃亡奴隷やならず者やよそ者も混じっていたかもしれない。それが、定住農耕民と張り合おうというので、団結して、ヤハウェを祀る祭祀連合を結成した。ヴェーバーの言い方だと、「誓約共同体」(同じ神をいただく宗教連合)ですね。そして少しずつ、カナンの地に侵入していった。(略)