読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

安倍官邸とテレビ

「「持論を訴える時間が確保できる番組」を選ぶ

それまで首相のテレビ出演は、各局順番に出演することが内閣記者会と首相側との取り決めだった。首相側によるメディア選別を防ぐ目的だったが、第二次政権の安倍首相再度は、「慣例にとらわれず単独インタビューに応じたい」と申し出た。



それに対して内閣記者会は、「メディアの選別や改憲の制限をしないよう求めた上で、ルール変更を認めた」(朝日新聞デジタル版、二〇一五年九月一五日「首相の出演TV局に偏り テレ朝・TBSはゼロ、基準は」)というが、この現状をメディア側はどう感じているのか。



安倍首相の一方的な対応について、記者クラブは何も言わないのだろうか?既得権益団体とされて批判の対象にもなる記者クラブであるが、日本新聞協会の見解(二〇〇二年一月発表、二〇〇六年三月改定)では「「記者たちの共同した力」を発揮するべき組織である」としている。最高権力者である総理大臣が、恣意的な基準で「独占インタビュー」に応じたり、「独占出演」したりすることは、明らかなメディアの選別である。民主主義社会において、それが喜ばしいことだろうか?


にもかかわらず、内閣記者会に属する記者が現状を問題視する記事は少ない。私が見つけた数少ない記事の一つが、北海道新聞のものであった。
「首相 メディアを選別 持論展開へ出演テレビ局に偏り」(二〇一五年一二月三〇日)の中で、津田祐慈記者は「安倍晋三首相は今年、集団的自衛権行使を可能にした安全保障関連法や環太平洋連携協定(TPP)参加などについて、国民への「丁寧な説明」を強調してきた。



ただ実際は、テレビ出演は特定の放送局に偏り、記者会見の回数も減少。安保関連法などで突っ込まれるのを警戒したとみられ、一方的に発信する傾向を強めた一年だった」「官邸筋は「首相は放送局が発言を編集できない生放送で、持論を訴える時間が確保できる番組を選んでいる」と明かす。



首相の記者会見は13年は20回、14年は19回行われたが、今年は13回。一方安保関連法案が国会審議中の7月、自民党のインターネット番組に5回出演し、法整備の必要性を繰り返し訴えた。党のネット番組には13、14年、各1回しか出ていない」と指摘する。



このような問題提起をする記事が、全国紙ではなく、ブロック紙からしか出てこないことに問題の根深さを思う。
戦後最大の会期延長までして成立させた安保関連法案については、二〇一五年九月一
九日の参議院本会議での採決後も、国民に向けた正式の記者会見は開かれていない。(略)



つまり、正式の会見は開かず、産経新聞日本テレビの独占インタビューを受けて、後は別荘に向かったということだ。


(2)NHK籾井体制をめぐる諸問題

NHK経営委員人事

第一次政権でも安倍氏NHKをメディア介入のターゲットとした。旧知の古森重隆富士フイルムホールディングス社長(当時)を経営委員長とすることで影響力を行使しようとしたのだが、前述したように、古森氏の強引な手法や現場への介入が強い批判を浴びた。


第二次政権でのNHK介入は、その轍を踏まず、まず、経営委員の任命という形で行われて行く。(略)」