読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

安倍官邸とテレビ


「二〇一三年一〇月二五日、経営委員の人事案(新任四名、再任一名)が国会に提示され、一一月八日に衆参両院の同意を得て決まった。これを受けて一一月一一日、小説家の百田尚樹氏、日本たばこ産業JT)顧問の本田勝彦氏がNHK経営委員に任命された。



百田氏は、二〇一二年の自民党総選挙選で「安倍晋三総理大臣を求める民間人有志の会」の発起人の一人に名を連ねた。また、百田氏と安倍氏は、この直後、二〇一三年一二月に共著「日本よ、世界の真ん中で咲き誇れ」(ワック)を上梓している。



本多氏は二〇〇〇年にJT社長就任後、二〇〇六年から同社顧問となった。「四季の会」(前述)のユウリョクメンバーといわれており、東大の学生時代、成蹊小学校に通っていた安倍氏の家庭教師をしていた。(略)



会長選出のキャスティングボートを握る

放送法NHK会長選出について、こう定めている。

第五十二条 会長は、経営委員会が任命する。
2 前項の任命に当たっては、経営委員会は、委員九人以上の多数による議決によら  
  なければならない。

3 副会長及び理事は、経営委員会の同意を得て、会長が任命する。
                  (以下、第4項は省略)

つまり、一二名の経営委員中、四人の反対者がいれば「九人以上の多数」は永遠に構成できない。安倍首相に近い四人を経営委員に入れることで、会長選出のキャスティングボートを握ることとなるのだ。(略)



松本会長はJR東海社長、副会長を経て二〇一一年一月に就任。受信料を値下げする一方、経費削減を進めて増収を図り、職員には新たな評価方法を取り入れて改革を促すなど、経営手腕が評価され、再任が有力視されていた。



しかし、四人の新経営委員によって状況は一変。読売新聞は、人事案が示されて間もない一一月一日に「NHK会長 交代の公算」、一一月九日にも「NHK会長交代へ」とする”スクープ”を相次いで報じた。



指名部会で籾井氏を候補に

NHKは、内規で、会長が任期満了となる半年前には全経営委員で構成する「指名部会」を設けることとしている。
この内規に従い、二〇一三年七月二三日に第一回指名部会が開催され、一二月一〇日の第九回指名部会では松本会長に次期会長候補者の一人として選任されたことを伝えたが、既に会長会見で辞意を示した後でもあり、辞退された。



そして、一二月一三日の第一〇回指名部会で推薦された候補者について投票を行ない、唯一過半数を超えた籾井勝人日本ユニシス特別顧問を会長候補者とした。(略)


就任会見の「放言」と、辞表取りまとめ

二〇一四年一月二互日、籾井勝人新会長の就任会見は異例の展開を見せた。記者の質問に対して、籾井氏が「個人的見解」をとうとうと述べたのだ。
従軍慰安婦問題について「今のモラルでは悪いことだが、戦争地域にはどこにもあった」とし、ドイツ、フランスの名を上げ、さらに「なぜオランダにまだ飾り窓があるんですか」と発言。


尖閣諸島竹島などの領土問題については「国際放送で日本の立場を主張するのは当然。政府が「右」というものを「左」というわけにはいかない」。特定秘密保護法については「国会を通っちゃったんで言ってもしょうがない」などと発言した。


これらの発言に対して批判が湧き起り、籾井氏は国会に招致される。そして、「個人的見解だ」「放送に反映させることはない」と発言を釈明した。しかし、二月一二日おn経営委員会では、経営委員からの就任会見以降の混乱への質問に対して、「ぜひこの前の記者会見のテキストを全部見ていただきたい。それでもなおかつ私は大変な失言をしたのでしょうか」と述べており、本心からの反省は感じられない。



なお、この日の経営委員会では、謝罪を求めて朝日新聞を訪れ、社内で拳銃自殺した右翼活動家・野村秋介を礼賛した追悼文を書いた長谷川三千子氏、都知事選の応援演説で「田母神俊雄候補以外は人間のクズ」などと発言した百田尚樹氏に対して、「経営委員の言動についての経営委員会見解」として「公共放送の使命と社会的責任を深く自覚するとともに、一定の節度を持って行動していくこと」をあらためて申し合わせた。


籾井会長については、就任当日一月二五日の臨時役員会で一〇人の理事全員に辞表を提出させていたことも問題となった。
二月二五日の衆議院総務委員会に呼ばれた理事全員が、日付欄を空白にした辞表の提出を認めた。これに対して籾井会長は、二六日の衆議院予算委員会第二分科会で「辞表を預かったことで委縮するとは思わない。辞表の取りまとめは一般社会ではよくあること」と述べたが、元東芝会長の日本郵政西室泰三社長をはじめ、経済界から多くの”反論”を受けることとなった。


三月六日の定例会見では「緊張感を持ち、一丸となってやっていくつもりだ」と述べ、三月二〇日には辞表を返却する気のないことを明らかにしたが、結局四月二一日
辞表は返却された。



国会が籾井会長の職場?

(略)
特に就任直後の二〇一四年二月・三月は、連日のように国会に呼ばれている。国会審議対応はNHK会長の仕事の一つだが、過去、自らが蒔いた問題で、これだけ国会に呼ばれた会長はいない。


ちなみに国会の参考人には「議員に出頭する証人等の旅費及び日当に関する法律」により、日当が出る。陳述時間四時間以上が二万三二〇〇円、四時間未満が一万九〇〇〇円とかつて聞いた。今もその額かどうかは分からないがすべての、回が四時間以上仮定して単純計算すると、一九〇万二四〇〇円の税金が支払われることになる。(略)」