読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

日本人とは何か。

〇 山本七平著「日本人とは何か。ー 神話の世界から近代まで、その行動原理を探るー」を読み始めました。

読み始めたのはもうずいぶん前です。山本氏の著作は古文書等を挙げて論じているものが多く、その難しさに私の頭はついて行けません。

そんなわけで、上巻を読んだところで、ひと休みしています。

もう、このままギブアップするかもしれませんが、何か所か、とても印象深かった所もあるので、その部分だけでも、メモしておきたいと思います。

 

引用部分は「」で、感想は〇でメモします。

 

「◎ 日本の独創性

(略)

「すると中国から模倣しなかったものがあったんですか」

「そうですなあ。科挙、宦官、族外婚、一夫多妻、姓、冊封、天命という思想とそれに基づく易姓革命、さらにそして少し後代なら纏足がなく、日本だけにあるのがかな、女帝(女王)、幕府、武士、紋章ですかな。

 

 

後になると漢学・蘭学と平気で並べており、どこからでも聴講しています。それから料理と葬式と墓ですか。前にある中国人から、日本料理が中国と全く無関係なのに驚いたと言われました。豆腐や味噌は中国伝来ですが、料理そのものの基本は全く違うというのです。さらに彼は昭和天皇の御大葬の簡素さに驚き、歴代の御陵が中国と余りに違うのに驚いていました。違いはそのほかにもありますが……。」(略)」

 

 

「(略)

韓国人には族譜(または世譜)という膨大な系図があります。これは日本のいわゆる系図からは想像できない膨大なもので、釜山大学の金日坤教授に、先生のところは何冊ぐらいとうかがいましたら、何と四十冊、そして国中の系図の複本が韓国の国会図書館にあるそうで、こういう国は世界で韓国だけだろうと言っておられました。

 

 

 

この同一系図の中に入っている者同士は結婚できない。簡単に言えば血縁の範囲が非常に広くて、その血縁内では結婚できない。そこで族外婚と……」(略)

 

 

 

「では日本人の姓や結婚原則はどうなっていたのですか」

「姓のあった人間もいましたが、殆ど無かったわけで、簡単に言えば名前だけです。これも必ずしも珍しくなく、インドネシアがそうです。スカルノスカルノだけ、スハルトスハルトだけ。タイもそうだったのが、イギリスの影響で姓を作ったそうです。

 

 

 

これを父系姓でも母系姓でもない双系姓社会とする学者がいますが、日本もこの傾向が強かったようで、この点では東アジアの大陸的文化より、東南アジア系と言えるかもしれません。

タイがイギリスの影響を受けたように、先進大国の影響はどこの国も受けますが、韓国人はきまじめに中国文化を摂取して生命も中国式にしたんでしょう。日本人はそんなにまじめじゃないですな。

 

 

『天命思想抜きで科挙抜き律令制』なんてやっていたのですから。(略)」

 

 

 

「◎「骨・職・名」区分の新しさ

伊達千広(一八〇二ー一八七七年)は紀州藩士、有名な陸奥宗光の父であり、藩内の政争にまきこまれて九年の蟄居を強いられ、後に赦されてから京都に出て公武合体に奔走したが失敗、帰国・閉居の身になるが、明治維新後に赦され、和歌と禅にひたる晩年を送った。(略)

 

 

彼はあるがままに日本の歴史を見、徳川時代に至るまでを「骨(かばね)の代」「職(つかさ)の代」「名の代」と三つに区分した。今の言葉になおせば「氏族制の時代」「律令制の時代」「幕府制の時代」ということになろう。(略)

 

 

 

そして当然のことだが、日本の歴史は日本の基準で記さざるを得ず、中国の基準をもってきても、西欧の基準をもってきても、おかしなことになってしまう。そこで本書はこの「大勢三転考」の基準で記しつつ日本文化の特性へ進もうと思う。(略)」