〇 雪乃紗衣著「エンド オブ スカイ」を読みました。
「彩雲国物語」でファンになり、「永遠の夏をあとに」で、ずっとこの人の言葉を読んでいたい、と思いました。
SFものは苦手なので、最後まで読み切れるかな…という不安はありましたが、
なんとかかんとか行き着きました。
心に残った言葉をメモしておきたいと思います。
「一ヶ月前、母が死んで、ヒナは一人になった。
研究が手につかないくらい心が沈んだ。
ヒナはその気持ちをもっていたかった。
(略)
それこそ脳内ニューロン信号を少しコントロールすれば、感情は落ち着く。
ヒナはどれもやらなかった。」
「男の子の胸からは海鳴りが聞こえた。輝くような生命の音が。」
「少年 — HAL ― のゲノム解析は、その気になれば一ヶ月前にはできた。
ヒナの服に付着した皮膚片や分泌物を調べればすんだけれど、ヒナはやらなかった。人権侵害等の問題というよりも…… あの幻みたいな一夜が、別の形に歪むように思えたので。」
「すべてのヒトはすべて同等の掛け金を賭けられ、必要があって今ここにいる。(略)
人間は社会的生物であり、集団生活を営む生物であり、でありながら集団の中身は決して「同じであってはならない」生物だ。私たちヒトはすべて違っていなければならん。でなくば、大いなる危機が訪れたとき、一発で絶滅するからな。」
「だが、私たちが「異常」だとみなした因子が、ヒト存続に必要なものだったとしたら?」
「それに、雨降りの日に<洪水地帯>の廃墟に逃げるような私でなければ、ハルと出会えなかったから。」
「— 地球の片隅に二人くらい、ヒナと俺みたいなのがいたって、たいしたことじゃない。」
〇 AD22✖✖年の物語、ということで、最初なかなか入り込めませんでした。
でも、後半どうなるのか気になり、引き込まれました。
あの「サピエンス全史」の中でも触れられていた、「神になった人間」の問題とも
絡む部分があり、面白かったです。
でも、一番惹かれたのは、未来の人間を扱っている、という所ではなく、
人間、ヒトの感じ方や考え方が、繊細に扱われている所です。
私は、この雪乃紗衣さんのそこがとても好きなんだと思います。