内容は気持ちがヒリヒリするような、身につまされる辛いものなのに、
どうしてこんなに読みやすいんだろう、って思いながら読んでいます。
熊太郎が、野犬に追いかけられて、大声で助けを求めても、
誰も出てきてくれない。鍬で犬を殴りつけ、傷めつけても、犬の群れは
少しも怯まず追いかけてくる。もうダメだと絶望した時、持っていた猪の肉を
思い出す。
読みながら、「あぁ、そうだ~」と思いました。
私もすっかり忘れていました。
「少年に河童と言われ、顔を真っ赤にして怒鳴る清やんをみて熊太郎は、ああ、
やはりこの人は自分が河童に似ているのを気にしていたのだな。
それやったらあんな髪形にしなければよいのにと思った。」
「そしていまこの男の口がぼさっとしているのはいったいどういう因果の
巡りあわだろうか。おそらくなんの巡りあわせでもあるまい。」
笑ってしまいます。
高熱を出し、心をいれかえ、田を耕してまともな百姓になろうとするのに、
実際にそうしてみると、そのあまりの「つまらなさに」
すぐに続かなくなってしまう。
ちゃんとしようと思うのに、ちゃんとするには地道な時間がかかる、という
くだり、本当に身につまされました。
今日は、
「ついこないだまで批判的であったくせにもうこんなことをしている。
実に軽薄である。」
そして盆踊りに出かけるという場面まで読みました。