読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

精神の生活 上

「思考がどの科学的活動においても非常に大きな役割を演じていることは
疑いの余地のないところであるが、それは目的にに対する手段の役割としてである。

ところで、目的は何が知るに価するかということの決定によって規定されてくるし、
これを決定するのは科学ではありえない。」


「無限の進歩という観念は近代科学の発生と時を同じくし、今でも主要な
役割をはたしている観念だが、この概念自体からして、すべての化学がつねに
誤謬や錯覚を訂正していくという常識経験の枠のなかで動いているという事実が
もっとも明確に証明されている。」

「この点で忘れるべきでないのは、後に、十八世紀の啓蒙思想において大きな役割
をはたした人類が無限に完成されていくことができるという考えが、十六、七世紀の
むしろ人間性についての悲観的な評価の中では存在しなかったということだ。」


「つまり、真理の観念が一連の正しさに変形された、あるいは、堕落させられたのである。この場合、個々の正しさはそのときときには一般的な妥当性をもっているというのだが、研究の継続があること自体、それが一時的な妥当性しか持っていないことを示しているのだ。これは奇妙な事態だ。」


「思考の求めるものは、ものについてそれが何であるかとか、それが存在しているか
どうかとか(存在しているのは自明のこととされている)ではなくて、それが
そんざいしていることがどういう意味があるのかということなのである。

この真理と意味の区別は人の思考の本性を探っていくためにはいつでも決定的で
あると思われるだけでなく、カントによる理性と知性の重要な区分の必然的な
帰結のように私には思われる。」