読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

中空構造日本の深層 (※ 交戦権承認の是非について)


(※原本に、このような副題はついていません。
でも、あとで、メモの内容を探す時、いつも苦労するので、今後は、
※マークをつけ、内容についても、書いておくことにします。)


〇今、「中空構造日本の危機」という見出しの部分を読んでいます。

その中で、父性の弱さの問題点について語られているのですが、読み進んでいくうちに、「そういうことなんだ…」とまさに目からウロコの論理を聞かせてもらったので、忘れないうちに、そのことをメモしておこうと思います。

小見出し「巡回」から「統合の論理と均衡の論理」については、また後で戻って、メモすることにします。


「このような学校や家庭における父性の弱さを反省する人は、誰しも戦後教育の甘さを批判することになる。戦後、日本人が受け止めた「民主主義」は、権力の否定と言うことに強く結びつき、敗戦まで日本の家庭内において権力者として威張っていた父親の価値は急落したのであった。」


「(徴兵制)しかし、既に述べてきたように、徴兵制復活を願う人々の気持ちの中には、端的に言えば、それによって現代の若者たちを「鍛え直したい」という教育的願望が濃厚に存在している。」


「(略)実はこのような国民感情ほど恐ろしいものはなく、それが途方もない力を有するものであることは、われわれが痛い教訓を通して体験してきていることである。


そして、このことを熟知している「仕掛人」は、たとえば、徴兵制度を論じるにしても、それに伴う具体的内容をあまり示すことなく、「日本が危ない」とか、「青少年を鍛える」などのキャッチ・フレーズによって、ひたすら「国民感情」に訴える方法をとることが多いのである。」



「(略)森嶋氏は、その論文の冒頭に、「日本では通常「国民的合意」は軽率に、しかも驚くべき速さで形成される。その上、一旦「合意」が出来てしまうと、異説を主張することは非常に難しいという国柄である」と指摘している。」



「筆者は以前より、日本における父性の弱さを問題視してきた。しかし、「父権復興」という用語は用いたことはない。これは、わが国には復興すべきような父権など、もともと無かったという認識に立っているからである。

これは既に他に論じたことであるので(「母性社会日本の病理」中央公論社刊)、繰り返しを避け、結論だけ述べると、わが国は心理的には母性優位の国であり、欧米の父性優位性と対照的であると言う事である。」


「統合によらず均衡に頼る日本のモデルでは、中心は必ずしも力を持つことを要せず、うまく中心的な位置を占めることによって、全体のバランスを保つのである。


このような西洋と日本のモデルの差は、両者の比較において、日本人の心性のみでなく、政治、宗教、社会などの状態を考える上で適切な示唆を与えてくれる。」



「日本においては、長はたとい力や能力を有するにしても、それに頼らずに無為であることが理想とされるのである。」



「日本の中空構造の利点はこれ以上述べなくとも、現在では相当明らかであろう。
そこで、むしろ、その短所の方を指摘するならば、その中空性が文字どおりの虚、あるいは無として作用する時は、極めて危険であるという事実である。」


「たとえば、最近敦賀原子力発電所における事故にまつわるその無責任体制が明らかにされたことなどは、その典型例であると言えるだろう。

最も近代的な組織の運営において、欧米諸国から見ればまったく不可解としか思えないような、統合性のない、誰が中心において責任を有しているのかが不明確な体制がとられていたのである。


このような無責任体制も、それが事無く働いている時は、案外スムースに動いているのもであるが、有事の際にはその無能ぶりが一挙に露呈されるのである。


敦賀原子力発電所を例にあげたが、日本の近代的組織は、時に驚くべき無責任体制であることを示す事実は、枚挙に遑がないであろう。」


「われわれ臨床家が、このような無気力症の若者に会うとき、その中心の無さに触れて。中心の喪失というよりも、もともと無かったものが急激に「無」ということを意識させられているように感じられるのである。」



「ある非行少年に会って、われわれがまず気づいたことは、その父親があまりにも少年の要求を聞き入れすぎているという事であった。(略)


このような弱い父に会って、われわれが驚いたのは、その人が戦争中の勇士で勲章まで貰っているという事実であった。


この父親と話し合って感じたことは、彼は突撃という命令が下されるときは、それに従って勇敢に行動し得るのであるが、子供からいろいろな要求を突き付けられたとき、自分の個人的判断によってそれに対面する強さをまったくもたないという事であった。」


「このことは、われわれ臨床家が常に経験するところであり、自分の子供を「厳しく鍛え直す」ことを主張する多くの親は、それを自らがやる意志はなく、他人に委ねようとする姿勢を示し、その弱さ故にこそ子供の強烈な反発を引き起こしているのに気づかないのである。


このようなことに気づかずに、父権復興のかけ声に乗せられ_かけ声に乗ることがそもそも父性の弱さを意味するのだが_あわてて徴兵制復活などをするならば、日本の誇る中空性の中央に、低劣な父性、あるいは母性に奉仕する父性の侵入を許すことになり、戦争中の愚を繰り返すことになるのみであろう。」


〇長くなったので、一旦、ここでやめ、続きはまた後にします。