読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

サピエンス全史  上 <書記体系の発明>

「進化は人類にサッカーをする能力を与えてはくれなかった。(略)いつの日にであれ、午後に学校のグラウンドで知らない人たちと試合をするには、それまで一度も会ったことがないかも知れないような人10人と協力しなければならないばかりでなく、敵の11人の選手が同じルールでプレイしていることを了解してもいなければならない。


他の個体と儀式化した攻撃行動を取る人間以外の動物はすべて、主に本能からそうしている。世界中の子犬は、喧嘩のような荒々しい遊びのルールが遺伝子にもともと組み込まれている。

だが、人間のティーンエイジャーは、サッカーのための遺伝子など持っていない。それでも赤の他人とサッカーができるのは、誰もがサッカーについて同一の考えを学んだからだ。それらの考えは完全に想像上のものなのだが、全員が共有していれば、誰もがサッカーができる。


同じことがもっと大規模な形で、王国や教会、交易ネットワークにも当てはまるが、そこには一つ重要な違いがある。サッカーのルールは比較的単純で完結であり、狩猟採集民の生活集団や小さな村落での協力に必要なルールによく似ている。(略)


だが、22人ではなく、何千人、いや何百万人もがかかわる大規模な協力体制の場合には、誰であれ一個人の脳では保存や処理がとうていできないほどの、膨大な量の情報を扱い、保存する必要がある。」



「帝国は厖大な量の情報を生み出す。帝国は法律以外にも、さまざまな業務や税金の記録、軍需品の目録や商船の目録、祝祭や戦勝記念の日程といったものを維持しなければならない。


人々は何百万年にもわたって、ただ一か所に情報を保存してきた。すなわち、自分の脳に。あいにく、人間の脳は帝国サイズのデータベースの保存装置としてはふさわしくない。それには三つの理由がある。


第一に、脳は容量が限られている。(略)
第二に、人間は死に、脳もそれとともに死ぬ。(略)
第三に、人間の脳は特定の種類の情報だけを保存し、処理するように適応してきた。(略)だが、農業革命の後、著しく複雑な社会が出現し始めると、従来とは全く異なる種類の情報が不可欠になった。数だ。(略)これらの数をすべて記憶し、思い出し、処理する必要に迫られた時、ほとんどの人間の脳は情報の過剰摂取に陥るか、あるいは眠りに陥る。(略)」


「紀元前3500年と紀元前3000年の間に、名も知れぬシュメール人の天才が、脳の外で情報を保存して処理するシステムを発明した。(略)シュメール人が発明したこのデータ処理システムは、「書記」と呼ばれる。」