読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

人間にとって法とは何か

統治権を放棄する日本政府

戦後民主主義について考えてみましょう。
本来、民主主義は法の支配によるものなのですが、法の支配によっていないのではないかと思われる徴候が、いくつもあります。



そのそも憲法の原則が、まるで機能していない。古典的な三権分立は、十八世紀、十九世紀のアイデアですから、社会が複雑になるとそのとおりにはなかなかいかないのですが、それにしても、日本の法律の大部分は官僚が立法して、政府提案で議会に提出しているものばかりです立法権が国会にあるとは言えません



そして、政党の統治権。本来、行政府がやるべき政策上の決定を、自民党のなんとか部会がほとんどやってしまうわけです。税金の問題であれば党の税務調査会、高速道路の建設であれば建設部会。ほかにも防衛部会、なに部会というのが、自民党には山のようにあります。そういうところで、大事な政策の基本は決定されてしまう。



小泉さんは改革をしていると言いますが、行革担当大臣が、改革がうまく進まないとぼやくと、党とよく相談してやってくれとか言うわけです。党と相談するとは、党が決めるというのとほとんんど同じなわけで、行政権を放棄して、党に丸投げしている。



長い間与党が政権を独占していると、国会が空洞化し、与党の中の一機関が、国会の委員会の代わりをしてしまう。そして、行政を監督する機能を持ち始める。これが政党の統治権という問題です。




予算問題と財政投融資の矛盾

財政投融資も、大変な問題です。
議会の役割の重要な点は、予算を審議することです。予算とは簡単に言うと、国がいくらお金を使うか、国民からいくら税金を取るかという話です。



国民は税金を払うにあたって、その金額に同意する必要がある。これが議会の根本的な原則です。予算制度は、民主主義の根幹なのです。そこで国民はいくら税金を払うか同意するのですが、国民は一億人もいますから、代表が国会に出て、予算案を審議して、いくら税金を集めるかを決める。



ところが日本には本予算のほかに、「財政投融資」というものがあって、国民から年金・郵便貯金などで集めた資金を政府が使う、ということがあります。これは予算と違うので、使途を国会で審議されないのです。でも予算の三分の二くらいの額がある。なんかおかしいと思いませんか。



こんな制度は日本にしかないと思いますが、大蔵省(いまは財務省)、政府に、たいへん都合のいい制度で、これでかなりの公共投資を行なうのです。投資したからといって利益が上がるわけではない。当然、年金、預貯金の原資は目減りしていくわけですが、都合が悪くなると国債を発行して、その穴埋めをする。



国際も税金ではない(借金である)から、政府が勝手に決めることができるのです。でも税金の一部は、その利払いに使われて行くわけです。国債費を払わなくてはいけないが、これが固定経費のようになってしまっています。



結局、うまいように政府に税金を使われている。これをチェックできないということは、民主主義ではないということです。このようにたいへんいおかしなシステムになっている。特殊法人の問題も大切ですが、財政投融資のシステムをなんとかしないといけない。



小泉さんが郵便貯金を改革すると言っていますが、それはある意味では正しいのです。年金のほかに、財政投融資には郵便貯金がかなり入っていますから。ここを民営化しないと、このシステムがずっと続いていくことになります。




民主主義はどこまで理解されているか

こうしたおかしなことがいっぱいあって、日本人は民主主義をなかなか理解できないのではないかと思いたくなります。
たとえばf、よくあるのは、多数決と全員一致を区別しない。大勢が賛成するのだから、どちらでも同じではないかと思ってしまうのですね。



多数決というのは、自由に反対意見を言って、討論をして、議決をして、最後に多数者の決定に従うという考え方です。
全員一致というのは、全員が一致することが原則になるので、反対意見が言いにくいと先ほども言いました。



全員一致が原則になっている決め方では、討論が出来ないのです。討論ができなければ、多数も少数もないのです。
このふたつは、似て非なるもので、むしろ正反対です。でも混同されている。ということは、多数決による意思決定をあまりやったことがないのだと思います。



もうひとつ、法律は人民を守るものなのですが、人民の感覚はそうではなくて、法律はうるさい、面倒くさい、できることなら関わりたくない、などと思ってしまう。これは困ったことです。


多くの革命は、人民が立ち上がり、自分たちの法律を制定する形で終わるのです。フランス革命もそうですし、アメリカ独立革命もそうですし、イギリスの革命もそうです。



しかし、明治維新の場合は、法律を制定することがなく、途中で借りてきました。しかも最初は律令制に復帰するという、非常におかしなかたちをとった。このことが、日本の社会に、いまに至るまで、大きなマイナスの影を落としていると思います。」


〇 物づくりに関しては、良いものと良くないものが選別できるのに、
何故、制度作りやシステム作りに関しては、それが出来ないのか…。

まさか、こんな酷い政府を黙って受け入れるほど情けない国民性でしかなかったとは…。