「この自我は、ことによれば、人間や世界が実在的なのか、たんなる幻影なのかは
かつて述べた言い方で言えば、「病的爽快」という常にある種の「陶酔」に似かよった
状況のなかで「生きて」いることだけは知っているのである。」
「言語を必要としているのは、我々の魂ではなく精神である。」
「それゆえ、哲学の勃興に先立って、人間界の領域の外側にある位置という観念を
ちょっとでも吟味するのが一番よかろう。」
「新たな神的な存在ということでピンダロスが考えていたのは、人間を永遠の
生命へと近づける詩人や吟遊詩人のことだった。
というのは、「行われたことの物語は行為そのものよりも長い生命を持ち」、
「語られたものは、見事に語られていれば永遠の生命を持って一人歩きをする」
からである。」
「たんに述べ伝えるのではなく、正しきものにするのであって、アイアスは恥辱を
理由に命を絶ったが、ホメロスは「アイアスを比類なく称賛したのである。」」
「語られたことを耳にして初めて、事の意味がはっきりとわかったのである。」
「世界や人間は称賛されることが必要であって、さもないと、その見事さが気づかれないままになってしまう。」
「現実に起こり、起こっている間に現象していることの意味は、消えて見えなくなった時に顕現するのである。(略)顕現させる人は現象に巻き込まれていない。」
「アリストテレスも賛成して次のように語っている。「人は哲学するか、さもなければ生きるのをやめてこの世から立ち去るべきである。」
「プラトンにとって当然であったこと。つまり「純粋な知は、変化や混合をうけることなくつねに同一であるものに係るか、あるいはこれにもっとも近いものに係るのである」ということは、近代の最終段階に至るまで、さまざまな変容をとげながら
哲学の根本前提でありつづけた。」