読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

サピエンス全史   上 第11章 グローバル化を進める帝国のビジョン

古代ローマ人は負けることに慣れていた。歴史上の大帝国の支配者たちはみなそうなのだが、ローマ人も次から次へと戦いで敗北しながら、それでも戦争には勝つことができた。打撃に耐え、倒れずにいられないような帝国は、本物の帝国とは言えない。

〇この意味がよくわかりません。戦いで敗北しながら戦争には勝つ。


「だがそのローマ人でさえ、紀元前二世紀半ばにイベリア半島北部から届いた知らせは腹に据えかねた。半島土着のケルト族の住む、スマンティアという小さな取るに足りない山の町が、ローマの支配下から脱け出そうとしたのだ。(略)


紀元前134年、ついにローマの堪忍袋の緒が切れた。(略)スマンティア人の闘志と戦闘技能に一目置いていたスキピオは、無用の闘いで兵士の命を無駄にしたくなかった。(略)


一年以上が過ぎ、糧食が尽きた。あらゆる希望を絶たれたことを悟ったヌマンティア人は、自らの町に火を放った。ローマの記録によれば、住民のほとんどがローマの奴隷になるのを嫌がって自ら死を選んだという。


後にヌマンティアはスペインの独立と勇敢さの象徴となった。「ドン・キホーテ」の著者ミゲル・デ・セルバンテスは、「ヌマンティアの包囲戦」(「スペイン黄金世紀演劇集」牛島信明編訳、名古屋大学出版会、2003年所収。邦訳のタイトルは「ヌマンシアの包囲」)という悲劇を描いた。


この作品は、ヌマンティアの町の破滅で幕を閉じるが、そこにはスペインの未来の繁栄のビジョンが描かれている。詩人たちは、この町の猛々しい守護者たちを称える賛歌を書き、画家たちは、包囲戦の壮大な光景をキャンバスに描き出した。


1950年代と60年代にスペインで最も人気のあった漫画本は、スーパーマンスパイダーマンについてのものではなく、ローマの圧政者と戦った古代イベリアの架空の英雄エル・ハバトの冒険を語るものだった。


今日に至るまで、古代ヌマンティア人たちは、スペインの武勇と愛国心の鑑であり、この国の若者の手本とされている。


だが、スペイン人の愛国者たちがヌマンティア人を褒めそやすときに使うのは、スキピオ母語であるラテン語に由来するスペイン語だ。(略)


ヌマンティア人の武勇を称賛するスペインの愛国者は、ローマカトリック教会の忠実な信奉者でもあることが多い_そう、ローマカトリック教会の。」



「同様に、現代スペインの法律は、古代ローマの法律に由来する。スペインのs時は、古代ローマの基礎の上に確立されている。そしてスペインの料理屋建築は、イベリア半島ケルト族の遺産よりもローマの遺産に、はるかに多くを負っている。(略)


これは私たちが好む類の物語ではない。私たちは勝ち目の薄い者が勝つのをうのが好きだ。だが、歴史に正義はない。過去の文化の大半は、遅かれ早かれどこかの無慈悲な帝国の餌食になった。


そしてその帝国は、打ち破った文化を忘却の彼方に追いやった。帝国もまた、最終的には倒れるのだが、豊かで不朽の文化の痕跡を残すことが多い。21世紀の人々のほぼ全員が、いずれかの帝国の子孫なのだ。」