読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

ジャパン・クライシス

「トリプル安へ

橋爪   再建市場がこういう状況になるとして、株式市場はどうなるんでしょうか。
教科書にどう書いてあるかというと、国債が売りに出されて値下がりすれば、資金が株式の方へ移動し、株が値上がりする。


小林   国債価格も株価も、両方下がってしまうシナリオもありえます。というのも、国債価格が下がった場合、金融機関は自己資本比率を維持しようとして、貸し剥がしを行う可能性が高い。それが全国的に行われるようになれば、企業の資金繰りは急激に悪化し、経済活動に深刻な影響を及ぼします。


その結果、企業の減収減益が生じ、株式による配当も期待できなくなりますので、株価も下がっていく。


つまり、国債価格が下落することで、日経平均株価も下がる。日本経済に対する市場の信認も失われるので、円も売られて安くなる。債権、株、通過のトリプル安です。しかも、円安によって国債価格がさらに下がり、株価も下がっていく。


橋爪   これまで日本で、トリプル安が起きたことはありますか。


小林   トリプル安という現象は起きたことはないですね。


橋爪   いまの日本人は、「円安」と聞くと大喜びで、「成長チャンスだ、株が上がるぞ」と思っています。


小林   (略)しかし、いま議論しているような、国債が危機的な状況に立ち至った場合、金融機関による貸し剥がしが進み、経済活動が停滞するという負の側面が出てくる。円安には正負両面があるわけですが、後者のほうが先に生じる可能性が高い。(略)


橋爪   そうなると、国債や株のかたちで資産を保有している金融機関の財務状況が、急激に悪化する。


小林   はい。生命保険会社も危なくなってきます。(略)


橋爪   長期ものの国債が値下がりしても、生保はじっと我慢するが、株式には敏感に反応して、それを先に売る、ということですか。


(略)


橋爪   そうなると、円安がさらに進むでしょうね。海外の機関投資家が、円を売り浴びせてくるのではないですか。


小林   その時点における日本の外貨準備高がどうなっているかで、外国人投資家の行動も大分違ってくるはずです。
彼らが日本国債および日本円を売り浴びせてくる場合を考えてみましょう。現時点で日本の海外資産は約二互〇兆円。それが一五〇兆円くらいまで減ったとしても、通貨危機が生じる可能性は高くはないのではないかと思います。


橋爪   なぜそう言えるんですか。
たとえばf、これから先一〇%の円安が進むという予測が広がったなら、とりあえず先物で円を売り、実際に円安へ動いたタイミングで円を買い戻して、差額を稼ごうとする人が出てくるはずです。


日本国内で円資産を持っている人だって、円安になる前に資産を海外へ移転させるか、外資を購入するかして一時避難し、円安が進んでから、円を買い戻そうとするはずです。


小林   たしかに、多くの日本人がそういう行動を取り始めれば、円安も急激に進むでしょうし、海外の投資家もそれを見越して売り浴びせを仕掛けてくるでしょう。


資本逃避が始まるわけです。そんなふうにして内外の機関投資家がこぞって円売り、ドル買いを始めてしまうと、政府や日銀が使えるドル資産(アメリカ国債)は現在約一〇〇兆円ですから、あっという間に枯渇してしまいかねません。」