読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

ジャパン・クライシス

「日本の国債は「重力に反している」

橋爪   日本の金融機関が当初、国債を購入した理由を考えると、当時は金利も五~六%とリーズナブルで、元金も保証されているという、絶対に損をしない投資先だったからです。



ところが金利が下がっていき、今や国債保有し続けるのは、売ったりしたら値崩れが起きかねず。それを防ぐためという状況に立ち至っている。


小林   それに加えて為替レートのこともあります。円高が続く限り、日本国債は外債よりも利回りがいいので、投資先として魅力があるわけです。


(略)


小林   たしかに、何かのきっかけで日本の多くの投資家が暴落を予測するようになれば、それが引き金となって国債が実際に暴落を始める可能性は大いにあります。


橋爪   過去の事例を見ると、誤報やごく些細なきっかけで、暴落が生じたケースが少なくありません。それがいつ、どのように起るかは予測不可能ですが、トレンドとしては、もうそういう、未知の領域に入っています。想定外のことがいつ起きてもいいように備えておくのが基本です。


小林   「未知の領域」という言葉はまさしく日本の経済学者が国債について感じていることを言い現しています。


Is the Sky Limit?  Can Japanese Govement Bonds Continue to Defy Gravity?

(天井知らず?日本国債は重力を欺き続けられるか?)という、日本国債について最近書かれた有名な論文があります。東京大学(論文執筆当時)の伊藤隆敏さんとスタンフォード大学の星岳雄さんが書いたものですが、副題にあるDefy Gravityとは重力に反している(重力を無視する)といった意味です。つまり、経済学者の常識からすれば、国債価格は今すぐ下落して当然なのにそうなっていない、ありえない事態が起きているという感覚が、この副題には表れているわけです。


しかも、このお二人のみならず、日本国債を研究している経済学者であれば、ほぼ全員が同じ直感を持っています。


橋爪   なるほど。
では、アメリカ政府や金融規制当局、あるいは中国や欧米の機関投資家の人たちは、日本の財政助教や累積債務について、どのようなことを言っていますか。


小林   IMFアメリカの政府機関は、二歩政府から豊富な情報提供を受けていますから、日本の財政がきわめて危険な状態にあるにもかかわらず、国債価格は不思議なことに高止まりしているということをよく知っています。


他方で、日本国債を買っている欧米の機関投資家にしろ、欧米の経済学者にしろ、あまり危機感は持っていません。「所詮、日本政府が国民から借金をしているだけなのだから消費税を三〇%に上げればそれで解決できるだろう」と、高を括っています。


政治も含め日本のことを良く知っていれば、消費税をそこまで上げるのがいかに困難であるかがわかるのですが、普通の外国人には理解できない。むしろ、「日本は経済大国なのだから、必要なだけ増税をすればいい。確かに財政状況は大変だが、それで済むこと」というのが、平均的な外国人の見方です。


橋爪   しかし、日本の政府がこんなにも硬直化していると、小さなつまずきが大事に至ることだって、充分あり得る。(略)


日本発のリスクが、アメリカをはじめ他国に波及しないよう、いざとなれば日本を見捨てる。自分で解決しなさい。これがアメリカの本音で、本気で助けてはくれないのではないでしょうか。


小林   その通りだと思います。(略)


小林   世界の人々はクールに傍観するのでしょうね。もちろん、火の粉が降りかからないよう、ブロックはする。(略9


橋爪   海外の投資家が日本国債の購入をやめる時が、年貢の納め時です。それが一五年後か二〇年後と予測されたら、実際にはそれよりずっと早く、買い控えが起こる可能性があるのではないでしょうか。


小林   あります。あるいは今のアベノミクスにより円安傾向が長期的に続くとか、海外から大量の化石燃料を購入しなければならない状態が続き、貿易赤字が膨らむ中で、円安がさらに昂進するといったシナリオが信用されるようになれば、海外の投資家だけでなく日本国内の投資家にとっても、日本国債よりも外債に投資する方が合理的な選択になって来る。そうなったとき、誰にもそれを止めることはできません。


(略)

小林   現に日本のメガバンクは、国債保有量をどんどん減らしています。既にリスク分散を始めているわけです。ですからここでマーケットの予測が変われば、国債から外債へ逃げ出すことも十分あり得ます。」