読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

ジャパン・クライシス(2 日本の借金を解剖する!)

「債務残高はGDPの二二〇%

橋爪   国債についての私の初歩的な疑問は、あらかたお尋ねしました。
そこで次に、そもそも国が責任をもっている借金には、国債のほかに、どのようなものがあるか聞きたいと思います。


日本の場合、地方自治体も、債券を発行することができますね。いくつかの政府関係機関も、債権を発行できる。


小林   そうです。日本の公的債務としては、中央政府が発行する国債のほかに、都道府県が発行する地方債、政府関係機関である日本政策投資銀行や、URと略される都市再生機構などが発行する財投機関債、さらには、そうした財投機関の資金調達のために政府が発行する財投債があります。


橋爪   財投債は、厳密な意味での国債ではないですよね。


小林   法律上は違うということですが、内実は全く同じで、国債そのものです。(略)

橋爪   それらを合計すると、一〇〇〇兆円になる。


小林   はい。その内訳は、地方債で二〇〇兆円、財投機関債で二〇兆円、そこに本来の意味での国債八〇〇兆円が加わるので、一〇〇〇兆円を超える額になるわけです。


しかも、それがどんどん増え続けている。



橋爪   一〇〇〇兆円という額は、日本のGDP国内総生産)の何%に当たりますか。

小林   日本のGDPは五〇〇兆円を切るくらいですから、二二〇%くらいでしょうか。

橋爪   それはすごい。国際的に見てその値は突出していますか。


小林   主要国の範囲で言えば、明らかに突出しています。


橋爪   国債発行残高が国家予算の二二〇%だったとしえも、けっこう深刻な事態だと思います。それが日本の場合、国家予算じゃなくて、GDPの二二〇にもなっているという。これは本当にすごいことだと思うんですが……。



小林   すごいことです。米国で六〇%ぐらい。ドイツも八〇%のレベルです。日本を除く先進国で最悪のイタリアですら、一二〇%ほどですから。ただ、日本政府は年金保険料の積立金や外貨準備などの資産を持っているので、総債務から資産を差し引いた純債務はGDPの一五〇ほどになります。それでも十分に巨額であり、先進国で最悪です。



橋爪   にもかかわらず深刻な感じが、あんまりしない。それはなぜでしょうか。人によっては、「国債とは、資産でもあるのだから、”莫大な借金を抱えている”と大騒ぎすることはない」とか、「国債保有しているのは同じ日本人なのだから、問題ない」とか言っています。これは、錯覚でしょうか。


小林   錯覚と言い得るところと、そうでないところがあります。

橋爪   え? 大事な点なので、しっかり伺いましょう。
それは、こういうことでしょうか。ある人がある人にお金を貸せば、借りた人にとってそれは負債ですが、貸した人にとってそれは債権となる。すると、差引ゼロになる。


しかも、お金を借りた方は、そのお金でもって、お金を借りなければ行うことが出来なかった活動をして、そこから何かしらの経済的な効果を得ているわけですから、マイナスどころかプラスになる。そういう意味で、錯覚とは言えない、ということですか。


小林   はい。政府が国債を発行して借りたお金で何か価値あるものを作って、それが政府の資産として保有されていたなら、その通りです。しかし、残念ながら、国債で借りたお金は、単にばら撒かれていて政府の資産になっていない場合が多いのです。(略)



言いかえれば、一二〇〇万円から、「政府の借金=国民の借金」である八〇〇万円を引いた四〇〇万円が本当の資産なのに、それに気づかず、一二〇〇万円の資産を持っていると「錯覚」しているわけです。



橋爪   なるほど。とても大事なポイントだと思います。
街を歩いている誰かに、「もしもし、あなたは一二〇〇万円も預金があるんですよね。そこで相談ですが、私の友人にとても優秀で人柄もいいAfさんがいて、レストランを開店します。きっと儲かるので、八〇〇万円貸してやって下さい」と声を掛けたとして、はいはい、と喜んで貸す人がいるでしょうか。(略)


日本人は、一人ひとりで判断するなら、バカなことはしない。
ところが今起こっているのは、日本国政府が信用できるかどうか。きちんと確かめてもいないのに、国民が一人あたり八〇〇万円も、いつのまにか、政府に貸してしまっているということなんです。


小林   そうなんです。
銀行なら安心だと思って預金をしたら、銀行はそのお金を国に貸してしまって、その分を国債として保有している。預金した当人は、そんなことになっているとは露知らず、一二〇〇万円分の銀行預金があると思い込んでいる。しかし、本当の価値は四〇〇万円しかない、というのが現状です。



橋爪   しかも、このままいくと二〇二〇年頃には、その四〇〇万円だって、ゼロになってしまうじゃないですか。なにしろ、政府の借金は、加速度的に毎年膨れ上がっているんだから。そうなったら日本国政府は、いよいよ本性を現して、借金を踏み倒すに決まっていると思う。


小林   その頃には国民は全財産を国債に投資している状態になるので、それ以上は国債を買い続けることができなくなってしまう。もちろん政府は、借金踏み倒しを先送りにしようとするでしょうが、そのためには海外の投資家に日本の国債を買ってもらうしかないという状況になります。



でも、そんな国の国債を買う海外投資家なんて、いるはずがない。そうなると、財政破綻に陥る直前のギリシャと同じ危機的状況になります。」