読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

ハリー・ポッター

〇 秋ごろから、腰なのか股関節なのか、という感じで、痛みが出て、困っていました。今は、かなり良くなったのですが、一番よくない姿勢が、「座る」姿勢です。

立っていたり、時には走っても、大丈夫。でも、座るとその後、立ち上がれなくなりました。

 

そんなわけで、一時は、ただひたすら、仰向けになっていた時期がありました。

そんな時に読んだのが、児童向けの本です。孫に薦めるのに、読もうと思ったのですが、思っていた以上に面白く、今となっては、「腰痛よありがとう…」と言いたいくらいです。

 

「ジムボタンの機関車大旅行」「ピノッキオのぼうけん」を読み、「ハリー・ポッター」も読みました。そして、この「ハリー」にめちゃめちゃ嵌り込んでしまいました。

 

 

そういえば、1997~8年ごろ、年に一度出るハリー・ポッターシリーズを待ちかねて、大勢が書店の前に並ぶ、などというニュースを見たことがありました。

作家のローリングさんのことを話題にしたニュースも聞いた記憶があります。

 

でも、あの頃は、全く自分には関係ないこと、と思っていました。

ところが今、かなり遅ればせながら、ハリー・ポッターファンになってしまいました。

 

すごくすごく面白いです。

「賢者の石」「秘密の部屋」「アズカバンの囚人」「炎のゴブレット」「不死鳥の騎士団」「謎のプリンス」「死の秘宝」

一度、全部読み終わり、今は、2回目を読んでいる所です。

「謎のプリンス」の2回目を読んでいますが、多分、最後まで行ったら、また3回目を

読むような気がします(^-^;。

 

読み終わったら、全部孫にあげようと思っていたのですが、あげるのはやめました。

賢者の石はあげたのですが、続きが読みたかったら、親に買ってもらいなさい、と言うつもりです。

 

それぞれの巻から、ひとことずつ、メモしておきます。

 

「賢者の石」

ダンブルドアが静かにいった。

「鏡が見せてくれるのは、心の一番奥底にある一番強い「のぞみ」じゃ。それ以上でもそれ以下でもない。君は家族を知らないから、家族に囲まれた自分を見る。

 

 

ロナルド・ウィーズリーはいつも兄弟の陰で霞んでいるから、兄弟の誰よりもすばらしい自分が一人で堂々と立っているのが見える。しかしこの鏡は知識や真実を示してくれるものではない。鏡が映すものが現実のものか、はたして可能なものなのかさえ判断できず、みんな鏡の前でヘトヘトになったり、鏡に映る姿に魅入られてしまったり、発狂したりしたんじゃよ。

 

 

ハリー、この鏡は明日よそに移す。もうこの鏡を探してはいけないよ。たとえ再びこの鏡に出会うことがあっても、もう大丈夫じゃろう。夢に耽ったり、生きることを忘れてしまうのはよくない。それをよく覚えておきなさい。(略)」

 

 

「秘密の部屋」

ダンブルドアはまた口髭をいたずらっぽく震わせた。

「それでも「組分け帽子」は君をグリフィンドールに入れた。君はその理由を知っておる。考えてごらん」

「帽子が僕をグリフィンドールにいれたのは」ハリーは打ちのめされたような声で言った。

「僕がスリザリンに入れないでって頼んだからに過ぎないんだ……」

「その通り」ダンブルドアがまたニッコリした。

「それだからこそ、君がトム・リドルと違う者だという証拠になるんじゃ。ハリー、自分がほんとうに何者かを示すのは、持っている能力ではなく、自分がどのような選択をするかということなんじゃよ」」

 

 

「アズカバンの囚人」

 

「「でも―― シリウスとルーピン先生がペティグリューを殺そうとしたのに、僕が止めたんです!もし、ヴォルデモートが戻ってくるとしたら、僕の責任です!」

 

「いや、そうではない」ダンブルドアが静かに言った。

「「逆転時計(タイムターナー)」の経験で、ハリー、君は何かを学ばなかったかね?我々の行動の因果というもんぼは、常に複雑で、多様なものじゃ。だから、未来を予測するというのは、まさに非常に難しいことなのじゃよ。(略)」

 

 

「でも、それがヴォルデモートの復活につながるとしたら!——」

「ペティグリューは君に命を救われ、恩を受けた。君は、ヴォルデモートのもとに、君に借りのある者を腹心として送り込んだのじゃ。魔法使いが魔法使いの命を救う時、二人の間にある種の絆が生まれる……。

 

 

ヴォルデモートが果たして、ハリー・ポッターに借りのある者を、自分の召使として臨むかどうか疑わしい。わしの考えはそうはずれてはおらんじゃろ」」

 

 

「炎のゴブレット」

「「どうしてまともに走れないんだろう?」

「きっと、隠れてもいいっていう許可を取ってないんだよ」ハリーが言った。

ドビーのことを思い出していたのだ。マルフォイ一家の気に入らないかもしれないことをするとき、ドビーはいつも自分をいやというほど殴った。

 

 

ハーマイオニーが憤慨した。

「奴隷だわ。そうなのよ!(略)どうしてだれも抗議しないの?」

「でも、妖精たち、満足してるんだろ?」ロンが言った。

「ウィンキーちゃんが競技場で言ったこと、聞いたじゃないか……「しもべ妖精は楽しんではいけないのでございます」って…… そういうのが好きなんだよ。振り回されるのが…」

 

 

「ロン、あなたのような人がいるから」

ハーマイオニーが熱くなり始めた。

「腐敗した、不当な制度を支える人がいるから。単に面倒だから、という理由で、なんにも……」」

 

 

「全部が全部じゃねえです」ハグリットの声はかすれていた。

「みんながみんな、俺が残ることを望んではいねえです」

「それはの、ハグリッド、世界中の人に好かれようと思うのなら、残念ながらこの小屋にずっと長いこと閉じこもっているほかわるまい」

ダンブルドアは半月メガネの上から、今度は厳しい目を向けていた。

 

 

 

「わしが校長になってから、学校運営のことで、少なくとも週に一度はふくろう便が苦情を運んでくる。かといって、わしはどうすればよいのじゃ?校長室に立てこもって、だれとも話さんことにするかの?」

 

 

 

「自分の役職に恋々としているからじゃ、コーネリウス!あなたはいつでも、いわゆる純血をあまりにも大切に考えてきた。大事なのはどう生まれついたかではなく、どう育ったかなのだということを認めることが出来なかった!あなたの連れて来た吸魂鬼(ディメンター)が、たったいま、純血の家柄の中でも旧家とされる家系の、最後の生存者を破壊した― しかも、その男は、その人生でいったい何をしようとしたか!

 

 

 

いま、ここで、はっきり言おう― わしの言う措置を取るのじゃ。そうすれば、大臣職に留まろうが、去ろうが、あなたは歴代の魔法大臣の中で、最も勇敢で偉大な大臣として名を残すであろう。もし、行動しなければ―歴史はあなたを、営々と再建して来た世界を、ヴォルデモートが破壊するのを、ただ傍観しただけの男として記憶するじゃろう!」

 

 

「正気の沙汰ではない」

またしても退きながら、ファッジが小声で言った。」

 

 

「あなたも先生方も、いったい何をふざけているのやら、ダンブルドア、わたしにはさっぱり。しかし、もう聞くだけ聞いた。私も、もう何も言うことはない。(略)」

 

「くよくよ心配してもはじまらん」ハグリッドが言った。

「来るもんは来る。来た時に受けて立ちゃええ。ダンブルドアがおまえさんのやったことを話してくれたぞ、ハリー」

 

(訳者 松岡氏のあとがきから)

 

「第四巻執筆の途中で、ローリングは、計画していたトリックがうまくいかないことに気づき、書き直し、そのためにこれだけの長編になったという。本人の口からそれを聞いた。作品を読む限り、もともとの筋立てがどうだったのか、どこがどう破綻しそうだったのかは全くわからない。

 

綿密に織り上げられた筋立てや、一巻から三巻まで積み上げてきた伏線の見事な生かし方に舌を巻くばかりだ。ローリングの頭の中には、登場人物の一人ひとりが生まれてから、ハリー・ポッターシリーズに登場するまでのすべての物語が出来上がっていると、作者本人が語っている。(略)」

 

「不死鳥の騎士団」

 

「「わかっているわよ」ハーマイオニーは、びくっとした顔で慌てて言った。

「私にはわかってるのよ、ハリー。だけど新聞が何をやってるか、わかるでしょう?あなたのことを、まったく信用できない人間に仕立て上げようとしている。ファッジが糸を引いているわ。(略)」

 

「ぼくのばあちゃんは、それデタラメだって言ってた」ネビルがしゃべりだした。「ばあちゃんは、「日刊予言者新聞」こそおかしくなってるって、ダンブルドアじゃないって。ばあちゃんは購読をやめたよ。僕たちハリーを信じてる」ネビルは単純に言い切った。」

 

 

〇 単純に言ってしまえば、闇の帝ヴォルデモートとハリーの闘いなのですが、それが、「悪の勢力」と「善の勢力」との闘いになっていて、今この国(日本)で起こっている、「民主主義を守ろうとする勢力」と「権力者が好きなように出来る社会を作ろうとする勢力」の戦いにとても、似ているのです。

 

闇の勢力の存在を認めると、それと闘わなければならない。その闘うということから、逃げるために、闇の勢力の存在を認めない。あたかも何も問題がないかのようにふるまう。問題を言い立てる人々の言論を封じ、マスコミを抱き込んで、自分たちに都合の良い、情報だけを流す、という流れが、子供向けのファンタジーのはずなのに、どんなものを読むよりも、リアリティーを感じるように、描かれています。

 

すごい!!と思います。

 

「謎のプリンス」

「僕は利用されたくない」ハリーが言った。

「魔法省に利用されるのは、君の義務だという者もいるだろう!」

「ああ、監獄にぶち込む前に、本当に死喰い人なのかどうかを調べるのが、あなたの義務だという人もいるかもしれない」

ハリーはしだいに怒りが募って来た。

 

「あなたは、バーティークラウチと同じことをやっている。あなたたちは、いつもやり方を間違える。そういう人種なんだ。違いますか?

 

 

目と鼻の先で人が殺されていても、ファッジみたいにすべてがうまくいっているふりをするかと思えば、今度はあなたみたいに、お門違いの人間を牢に放り込んで、「選ばれし者」が自分のために働いているように見せかけようとする!」

 

(略)

 

「いいえ、正直な言い方でした」ハリーが言った。「あなたが僕に言ったことで、それだけが正直な言葉だった。僕が死のうが生きようが、あなたは気にしない。ただ、あな

たは、ヴォルデモートとの戦いに勝っている、という印象をみんなに与えるために、僕が手伝うかどうかだけを気にしている。大臣、僕は忘れちゃいない………」

 

ハリーは右の拳を挙げた。そこに、冷たい手の甲に白々と光る傷跡は、ドローレス・アンブリッジがむりやりハリーに、ハリー自身の肉に刻ませた文字だった。

 

「僕は嘘をついてはいけない」

 

「ヴォルデモートの復活を、僕がみんなに教えようとしていたときに、あなたたちが僕を護りに駆けつけてくれたという記憶はありません。魔法省は去年、こんなに熱心に僕に擦り寄ってこなかった」」

 

 

「ハリーはやっと、ダンブルドアが自分に言わんとしていたことがわかった。死に直面する戦いの場に引きずり込まれるか、頭を高く上げてその場に歩み入るかの違いなのだ、とハリーは思った。その二つの道の間には、選択の余地はほとんどないという人も、多分居るだろう。

 

しかし、ダンブルドアは知っている―― 僕も知っている。そう思うと、誇らしさが一気に込み上げてきた。そして、僕の両親も知っていた―― その二つの間は、天と地ほどの違うのだということを。」

 

〇ここで、ハリーが言ってることは、心に沁みました。

予言で、「ヴォルデモートかハリーか、そのどちらかが死ななければならない」と言われたことを指して、「結局は、すべて同じことではないですか?自分が相手を殺さなければ、自分が殺されてしまうのだから」と言います。

 

でも、ダンブルドアは、同じではない、と言います。

予言で(そういう運命になっているので)、それに従うことと、自分がどうしたいのか、を考え、両親、名付け親、友人を殺したヴォルデモートを破滅させたい、と自分の意思でそうすることとの間には、天と地ほどの違いがあるのだと。

 

 

「死の秘宝」

「「私が君の傲慢さも不服従をも許してきたダンブルドアではないということを、思い出したかね? ポッター。その傷跡を王冠のように被っているのはいい。しかし、十七歳の青二才が、私の仕事に口出しするのはお門違いだ! そろそろ敬意というものを学ぶべきだ!」

 

「そろそろあなたが、それを勝ち取るべきです」ハリーが言った。(略)

 

「どうやら君は、魔法省の望むところが、君とは ―― ダンブルドアとは ―― 違うと思っているらしい。我々は、ともに事に当たるべきなのだ」

 

「大臣、僕はあなたたちのやり方が気に入りません」ハリーが言った。「これを覚えていますか?」

ハリーは右手の拳を挙げて、スクリムジョールに一度見せたことのある傷跡を突き付けた。(略)」

 

 

 

 

「クリーチャーは奴隷なのよ。屋敷しもべ妖精は、不当な扱いにも残酷な扱いにさえも慣れているの。ヴォルデモートがクリーチャーにしたことは、普通の扱いとたいした違いはないわ。魔法使いの争いなんて、クリーチャーのようなしもべ妖精にとって、何の意味があると言うの?(略)」

 

〇 この本の中でハーマイオニーがしもべ妖精について語る言葉が、何故か私たちの社会の「一般庶民」の姿と重なってしまうので、そのことを少し書いてみます。

カズオ・イシグロの「日の名残り」を映画で見た時、自分なりの解釈をして、好きだと思ったのですが、その後、イシグロ氏本人のインタビューをテレビで見る機会がありました。

 

その時、イシグロ氏は、自分の職務には熱心に取り組むけれど、その職務が社会全体の中でどのような役割を果たしているのか、どのような位置づけにあるのか、そのことには無関心な人が多いのが日本社会、というようなことを言っていたと思います。

 

そのような生き方には、問題があるのではないか、と。

 

 

「もちろん、多くの者が、何が起きたのかを推測した。この数日の間に、魔法省の政策が百八十度転換したのだから、ヴォルデモートが糸を引いているに違いないと囁く者は多い。しかし、囁いている、というところが肝心なのだ。誰を信じてよいかわからないのに、互いに本心を語り合う勇気はない。もし自分の疑念が当たっていたら、自分の家族が狙われるかもしれないと恐れて、おおっぴらには発言しない。

 

 

 

そうなんだ。ヴォルデモートは非常にうまい手を使っている。大臣宣言をすれば、あからさまな反乱を誘発していたかもしれない。黒幕にとどまることで、混乱や不安や恐れを引き起こしたのだ」

 

 

「僕には信じられない」ハリーが言葉を続けた。「僕に吸魂鬼との戦い方を教えた人が ―― 腰抜けだったなんて」

ルーピンは杖を抜いた。あまりの速さに、ハリーは自分の杖に触れる間もなかった。(略)

 

「親は」ハリーが言った。「子どもから離れるべきじゃない。でも―― でも、どうしてもというときだけは」

「ハリー ――」(略)

 

「わかってる」ハリーが言った。「でも、それでルーピンがトンクスのところに戻るなら、言ったかいがあった。そうだろう?」

ハリーの声には、そうであってほしいという切実さが滲んでいた。」

 

 

「君は、あいつの言うことを聞いてないから」ネビルが言った。「君だってきっと我慢できなかったよ。それより、あいつらに抵抗して誰かが立ち上がるのは、いいことなんだ。それがみんなに希望を与える。僕はね、ハリー、君がそうするのを見て、それに気づいたんだ」

 

〇 「それがみんなに希望を与える」この言葉が心に沁みました。逆だと、絶望に支配される…

 

 

「リリーがどのようにして、なぜ死んだかわかっておるじゃろう。その死を無駄にせぬことじゃ。リリーの息子を、わしが守るのを手伝うのじゃ」(略)

 

「エクスペクト パトローナム! 守護霊よ、来たれ!」

スネイプの杖先から、銀色の牝鹿が飛び出した。牝鹿は校長室の床に降り立って、一跳びで部屋を横切り、窓から姿を消した。

 

 

ダンブルドアは牝鹿が飛び去るのを見つめていた。そして、その銀色の光が薄れたとき、スネイプに向き直ったダンブルドアの目に、涙が溢れていた。

 

「これほどの年月が、経ってもか?」

「永遠に」スネイプが言った。」

 

〇 二回目の死の秘宝を読み終わりました。

子供向けの物語と言いながら、このお話は読者が大人であることを促す内容ではないかとしばしば感じました。

 

例えば、このスネイプは、いかにも感じの悪い人として描かれています。

実際、ハリーはこのスネイプが大嫌いでした。読んでいる私もスネイプが好きだ…とは

思いませんでした。でも、この、「人から理解されず」、「疎まれる」感じが、何か身近な感覚に感じられて、気になる存在ではありました。

 

そして、この最終巻の「プリンスの物語」でさまざまな事情に、スネイプ側から焦点があてられた時、スネイプの愛が浮かびあがり、人が生きて存在していることの切なさが、心に沁みてきます。

 

人の素晴らしさばかりではなく、弱さやずるさや悲しさも描かれています。あのダンブルドアに対する不信感や大勢の仲間といる時の孤独についても語られています。

でも、そんな現実をきちんと受け止めて、「大人でありなさい」と促しているように感じました。

 

自分の投げ込まれた状況を嘆いて泣き叫び、酒や夢に逃げ込み、「本音」むき出しに、苦しい苦しい…と歪んだ泣き顔を見せるのが、ごまかさない生き方だという考え方もある中で、私はやっぱり、こういうお話が好きだなぁと感じました。

 

大人でありたいと思うのは、私が子どもだからなのかもしれません。

これで、「ハリー・ポッター」のメモを終わります。