読んだ本のメモ

印象に残った言葉をメモします。

2019-06-01から1ヶ月間の記事一覧

一下級将校の見た帝国陸軍(still live, スティルリブ、スティルリブ…)

「闇の中で人が立ち上がる気配があった。その人は私に近づき、少し前でとまり、やや切り口上で言った。「いま収容された方ですか」「ハイ」私は答えた。一瞬の沈黙の後、相手はつづけた。「どなたか存じ上げない。階級も所属部隊もおうかがいしません。ここ…

一下級将校の見た帝国陸軍(組織と自殺)

「自殺の原因や動機はさまざまであろう。また実際には他殺に等しい、強要された自殺もあるであろう。多くの場合、自殺の真因は不明だが、その中で最もわかりにくいものは、この両者の中間にある自殺、いわば本当に自分の意志なのか、実際は他人の意志であっ…

一下級将校の見た帝国陸軍(死のリフレイン)

「ダメだ、もうダメだ」という状態に落ち込んだ時、その中における自分の一挙手一投足kを、そのまま正確に覚えていることは不可能に近い。I少尉救援の場合も、突っ込む直前でストップしたから覚えているわけで、もし突っ込んだら、たとえ生きて帰っても、…

一下級将校の見た帝国陸軍(最後の戦闘に残る悔い)

「昭和二十年八月十二日、終戦の三日前、私は軍用地図にあるバラナン部落の東のジャングルにいたはずである。「はずだ」という言い方は妙だが、パラナンは地図にはあっても、それはどの部落がそれか現地で確認できないからである。 当時の比島の地図は、奥地…

一下級将校の見た帝国陸軍(参謀のシナリオと演技の跡)

「考えてみるとそれも六月だった。だが、正確な日付はおぼえていない。徴兵検査が六月、予備士官学校のベッドでも思索が六月、輸送船が六月でマニラ上陸が六月十五日。また六月が来て、あのひからもう三年がすぎていた。 そして私は「天の岩戸」の底で、死ん…

一下級将校の見た帝国陸軍(「オンリ・ペッペル・ナット・マネー」)

なぜこういう奇妙なことになったのか。その基本的な理由は、「私の中の日本軍」を記した時より、オイル・ショック後の今日の方が理解しやすいであろう。軍人は二言目には「日清・日露の……」と言った。日露戦争時までは、戦艦、イギリス炭、下瀬火薬、小銃が…

一下級将校の見た帝国陸軍(私物命令・気魄という名の演技)

「天皇の軍隊で、”上官の命令は直ちに天皇の命令”なら、たとえどんな”無茶な”命令でも、命令一下、全軍がすぐさま動き、たとえ”員数作業”でも命令遂行の辻褄だけは合わせるはずである。 従って、われわれが「その命令が本物か否か」を、常に、最後の最後まで…

一下級将校の見た帝国陸軍(死の行進について)

「野坂昭如氏が「週刊朝日」50年7月4日号で沖縄の「戦跡めぐり」を批判されている。全く同感であり、無神経な「戦跡めぐり」が戦場にいた人間を憤激させることは珍しくない。 復帰直後のいわゆる沖縄ブームの時、ちょうど同地の大学におられたS教授は、…

一下級将校の見た帝国陸軍(地獄の輸送船生活)

「それはいずれの時代でも同じかもしれぬ。渦中に居る者は不思議なほど、大局そのものはわからない。従って今なら「戦史」で一目瞭然のことを知らなくても不思議ではない。しかしそれは、前述のような微細な徴候から全貌の一部が判断できなかった、というこ…

一下級将校の見た帝国陸軍

2018年11月頃に載せていた「一下級将校の見た帝国陸軍」をコピペします。 =================================================== 〇 山本七平著 「一下級将校の見た帝国陸軍」(昭和51年12月朝日新聞社刊)を文春文庫で読んでいます。 感想は〇………

「日本はなぜ敗れるのか」を移しました。

多くの人々が本当に悲惨な目に遭った戦争。その具体的な事柄を一つ一つ挙げて、 何故こんなことが起ったのだろう…と小松氏と山本氏が検証をしました。 もう二度とそのようなことがないように…と心から願うのに、 今の日本は、その反省や悔いをすっかり忘れて…

日本はなぜ敗れるのか _敗因21か条

「ルソンの日本軍は殆ど餓死であり、しかも米軍は六月二十八日に、比島戦の打ち切りを宣言している。あとはなずずべもない日本軍の残存部隊は、ただ、現地住民を苦しめつつ自らも餓死していくわけである。 一体全体、なぜそれを放置しておきながら、一方にお…

日本はなぜ敗れるのか _敗因21か条

「従ってその実体は最後には、だれにも把握できなくなってしまう。(略)そして激烈な”軍国主義”が軍事力とされてしまうから本当の軍事力はなく、”精兵主義”が精兵とされるがゆえに精兵がいない、という状態を招来し、首脳部は自らの実情すら把握できなくな…

日本はなぜ敗れるのか _敗因21か条

〇 山本七平著「日本はなぜ敗れるのか ―敗因21か条」を移します。 2018年1月に載せたものです。 =========================== 山本七平著 「日本はなぜ敗れるのか_敗因21か条」を読んでいます。 〇横井・小野田両̪氏に関…

「シーラという子」を移行しました。

こちらに移行しました。「読んだ本のメモ」

シーラという子 _虐待されたある少女の物語_

「次の学年にはこの教室はもうないのよ」私はても小さな声でいったので、ほとんど聞き取れないくらいだった。だが、シーラは両手の隙間からこの言葉をしっかりと聞き取った。 波が引いたように顔の表情が変わり、シーラは両手を降ろした。怒りの表情が消え去…

シーラという子 _虐待されたある少女の物語_

「吹雪と共に四月がやってきた。この冬のもどりをみんな嘆いていたが、ふわふわした真っ白な雪が深く積もった景色は、見ていてとても美しかった。しかし、この豪雪の為に交通が遮断され、学校も二日間休校になった。 学校が再開された日、シーラは朝の話し合…

シーラという子 _虐待されたある少女の物語_

「「トリイ」「なあに?」「あたしからぜったい離れて行かない?」 私は彼女の前髪を撫であげた。「そうね、いつかはそういう日がくるわね。学年が終わって、あなたが別のクラスに移り、別の先生に習うようになるときには。でもそれまでは離れないわ。それに…

シーラという子 _虐待されたある少女の物語_

「私が望んでいた通り、シーラの子どもらしい無邪気さ、身体が小柄なこと、生まれついての美しさすべてがあいまってミセス・ホームズの中の母性愛を引きだしたのか、彼女は喜んで、シーラがなんとか償いをしたいという気持ちを受け入れてくれた。」 「深入り…

シーラという子 _虐待されたある少女の物語_

〇昨日読み終わりました。途中から涙ばかり出ました。あぁ、人間の質が私とは完全に違う、と思いました。 メモはもう少し続けようと思っています。 「「(略)これを見て。あなたのために服をみつけてきたのよ。これを着たら、ウィットニーが午後来たときに…

シーラという子 _虐待されたある少女の物語_

〇内容が難しく読みにくい本は、ここで文章を入力しながら噛みしめて、やっと内容が頭に入る、ってことも多いのですが、このシーラという子は読みやすくて、どんどん進んでしまい、もう、かなり終りの方に近づいています。 こちらのメモが追いつかない状態。…

シーラという子 _虐待されたある少女の物語_

「私たちはお互いの顔を見た。その子の名前はシーラ。もう少しで六歳半になるところだった。艶のない髪に敵意むきだしの目をしたちっぽけな子供で、ひどい臭いがした。」 「毎朝”話し合い”から一日を始めることになっていた。我が校では授業を始める前に国旗…

シーラという子 _虐待されたある少女の物語_

〇 ヤフーブログが閉鎖されるので、こちらに移行するつもりでいます。 でも、ちゃんとできるのだろうか…と不安です。 それで、まだあと少し時間があるので、出来る分だけ、コピペで移したいと思います。 最近、「虐待で亡くなった少女」の話を立て続けに三人…

少しずつ移行させます。

〇 ブログを移行させようと思っているのですが、きちんとできるかどうか、 心配なので、読み直しながら、少しずつコピーして、移行したいと思います。 最初は、「シーラという子」と「タイガーと呼ばれた子」から始めたいと思います。

私たちが孤児だったころ

〇 カズオ・イシグロ著「私たちが孤児だったころ」を読みました。 この作者の物語は、ジグソーパズルのように、エピソードがバラバラに語られるので、読み終わると、必ず最初からもう一度読み直したくなります。 今、もう一度読み直している所なのですが、そ…

死にゆく人のかたわらで

「ガン細胞にブドウ糖が集まる (略) この検査では、がん細胞は正常細胞と比べて三倍から八倍くらいのブドウ糖を取り込むらしいことを利用して、ブドウ糖に近い成分を体内に注射し、そのブドウ糖に近い成分がどこに集まるかを検知しているのだそうだ。患者…

死にゆく人のかたわらで

「ごほうびでもらったいのち (略) しかし、ここではその話に深入りはすまい。いまはとにかく、心臓とか、脳とか、人間にとって、なくなったら「すぐに」死んでしまうようなところ、について話そう。 そういうところを外気にさらして手術すると、やはり人間…

死にゆく人のかたわらで

「第3話 青天の霹靂? 中咽頭ガン転移、ステージⅣの宣告 それは青天の霹靂のようなガン宣告、というわけではなかった。 二〇一三年四月二二日、夫は中咽頭ガンの頸部リンパ節転移、ステージⅣのガン、と診断された。(略) 要するに「ガンでいちばん深刻な状…

死にゆく人のかたわらで

「死にゆくときの「介助者」の役割 本来の第三者である「会場者」の役割とは、まさにここにあるのだろう。わたしは出産に関わる仕事をしてきた。世の中では人間は「ひとりでお産はできない」と思われている。産科医が減り、産科医院が減り、お産する場所がな…

死にゆく人のかたわらで

「下顎呼吸のかたわらの穏やかな時間 この日は、親しい若い友人の誕生日だった。わたしは「研究者」で、「大学教師」なので、専門分野を教えることによって、その後親しく付き合うようになった、昔ふうに言えば、まあ、「弟子」みたいな関係の若い友人が何人…